ジョン・ポステル

ジョン・ポステル（Jonathan Bruce Postel、1943年8月6日 - 1998年10月16日）は、アメリカ合衆国の著名な計算機科学者であり、インターネットの黎明期からその発展に大きく貢献しました。

生涯と業績

ポステルはカリフォルニア大学ロサンゼルス校（UCLA）で工学の学士号と修士号を取得後、計算機科学の博士号を取得しました。1969年にUCLAでARPANETの研究に携わった後、MITREコーポレーションを経て、1977年に南カリフォルニア大学情報科学研究所（ISI）に加わりました。この研究所で、彼はコンピューターネットワーク部門のディレクターを務めながら、インターネットの根幹をなす様々な活動に携わりました。

ポステルの業績として特筆されるのは、RFC（Request for Comments）文書の編集者としての役割です。彼は1969年から亡くなるまでRFCの編集者を務め、インターネットプロトコルスイートの基本を定めるRFC 791、RFC 792、RFC 793など、数多くの重要なRFCを執筆しました。また、1980年代初頭には、今日のDNS（Domain Name System）の基礎となるRFC 819、RFC 881、RFC 882、RFC 920などを共著しました。生涯で200以上のRFCを執筆または共著しており、その貢献は計り知れません。

さらに、ポステルはインターネットアーキテクチャ委員会（IAB）の一員として、インターネットの設計と進化に深く関わりました。また、Internet Assigned Numbers Authority（IANA）の管理者として、インターネットのアドレスやプロトコル番号の割り当てを管理し、インターネットの円滑な運用を支えました。彼はインターネットソサエティの設立メンバーであり、その評議員会にも名を連ね、また、.usトップレベルドメインの管理者も務めました。

これらの活動は、全て南カリフォルニア大学情報科学研究所のコンピュータネットワーク部門のディレクターとしての職務と並行して行われ、彼の精力的な活動ぶりを物語っています。

遺産

1998年10月16日、ポステルはロサンゼルスで心臓手術後の合併症によりこの世を去りました。彼のインターネット構築に対する貢献は、インターネットのコア技術文献の一部を形成するものであり、ヴィントン・サーフによる追悼文「I Remember IANA」（RFC 2468）にまとめられています。また、ダニー・コーエンも追悼文「Working with Jon」（RFC 2441）を著しています。

ポステルを記念して、インターネットソサエティはポステル賞を創設し、南カリフォルニア大学情報科学研究所にはポステルセンターが設立されました。2012年には、インターネットソサエティによってインターネットの殿堂入りを果たし、その功績は永く称えられています。

ポステルの法則

ポステルの法則（Postel's law）とは、「送信するものに関しては厳密に、受信するものに関しては寛容に」という通信における設計原則であり、堅牢性原則（robustness principle）とも呼ばれます。この法則は、ポステルがTCPを規定したRFC 793において、相互運用性を確保するためにTCPの実装が持つべき性質として要約したものが、より一般化されて知られるようになりました。この原則は、インターネットの発展において重要な役割を果たし、柔軟で相互運用可能なシステムの構築に貢献しました。

ポステルの貢献は、インターネットの基盤を築き、その成長を支える上で欠かせないものであり、彼の業績は今日においてもインターネット技術者にとって重要な指針となっています。

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