ジョン・ポラード

ジョン・M・ポラード：伝説の騎手、その生涯

ジョン・M・ポラード（1909年10月27日 - 1981年3月7日）は、カナダ出身の競馬騎手。赤みがかった髪から「レッド・ポラード」の愛称で親しまれ、1930年代のアメリカ競馬界でアイドルホース・シービスケットの主戦騎手として一時代を築きました。

波乱万丈な出自と騎手デビュー

幼少期に貧困を経験したポラードは、生活のために兄と共に賭けボクシングに参加。その後、父から与えられた馬で乗り方を覚え、厩舎で働くうちに騎手を志すようになります。アメリカの仮設競馬場でデビューを果たしますが、後見人が失踪し無一文に。苦労の末、1926年に調教師エイサ・C・スミスに雇われ、初勝利を挙げました。

メキシコの競馬場でも騎乗し、盲目の調教師ジェリー・デュランとの出会いを経て、才能を開花させます。気性の荒い馬を乗りこなし、次第にその名を知られるようになりました。1933年にはカナダのプリンスオブウェールズステークスで勝利するなど、着実に実績を重ねていきました。

しかし、その頃、調教中の事故で右目を失明するという不運に見舞われます。騎手生命を絶たれることを恐れたポラードは、この事実を隠し、大胆な騎乗でごまかし続けましたが、成績は徐々に低迷。騎乗機会を求めて各地を転々とすることになります。

シービスケットとの出会い

1936年、ポラードはイリノイ州の競馬場でロバート・トーマス・スミス調教師と出会い、彼の管理馬であったシービスケットと運命的な出会いを果たします。シービスケットに騎乗したポラードは、スミスに「あの馬には鞭を使わない方がいい」と進言。その進言がスミスに認められ、シービスケットの主戦騎手に抜擢されます。ポラード自身も「誰よりもこの馬を乗りこなせる」と自信を持っていました。

シービスケットとのコンビは、数々の勝利を重ね、一躍スターダムへと駆け上がります。しかし、サンタアニタハンデキャップでは、ローズモントの追撃を見逃し、2着に敗れるという苦い経験もしました。

1938年、ポラードはレース中の事故で骨折し、長期入院を余儀なくされます。その間、シービスケットの代役としてジョージ・ウルフが騎乗し、サンタアニタハンデキャップを制覇しました。

その後、ポラードは復帰を目指しますが、再び調教中の事故で足を骨折。怪我の痛みと騎乗できない鬱憤から酒に溺れ、アルコール依存症に陥ってしまいます。しかし、不屈の精神でリハビリに取り組み、シービスケットと共に奇跡の復活を遂げ、サンタアニタハンデキャップで見事優勝を果たしました。

引退後

サンタアニタハンデキャップの後、ポラードは一度騎手を引退し、調教師に転身しますが、上手くいかず、再び騎手に復帰。アメリカ初の騎手組合結成に加わり、初代役員に就任しました。第二次世界大戦中には兵役を志願しますが、体格不良を理由に拒否されます。

その後も騎手として活動を続けましたが、度重なる落馬事故により、大きなチャンスに恵まれることなく、1955年に引退。引退後はロードアイランド州で細々と暮らし、1981年に71歳でこの世を去りました。翌年、カナダ競馬名誉の殿堂入りを果たしています。

人物像

ポラードは、身長170センチメートルと騎手としては長身で、ボクシング経験もあり、喧嘩にも強かったそうです。幼い頃から古典文学や詩を愛読し、特にエマーソンの著作を好んでいました。記者からのインタビューでも、しばしばこれらの作品を引用し、その語彙の多彩さで人々を魅了しました。

家族としては、アイルランド系移民の出で、1939年に看護士のアグネス・コンロンと結婚。2人の子供をもうけました。ポラードは子供たちに読書を勧めましたが、競馬には一切関心を持たせようとしませんでした。

参考文献

* ローラ・ヒレンブランド『シービスケット あるアメリカ競走馬の伝説』

ジョン・M・ポラードは、その波乱万丈な人生と不屈の精神で、多くの人々に感動を与え続け、競馬史にその名を刻む伝説的な騎手として、語り継がれています。

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