ジョン・ポリドリ

ジョン・ウィリアム・ポリドリ：近代吸血鬼小説の父

ジョン・ウィリアム・ポリドリ (1795-1821) は、イギリスの小説家であり医師です。ロマン主義の文脈で活躍し、今日の吸血鬼小説の原型を築いた人物として知られています。彼の代表作である短編小説『吸血鬼』(1819年) は、近代的な吸血鬼物語として初めて出版された作品であり、文学史に大きな足跡を残しました。

生涯と背景

ポリドリは、イタリアからの亡命政治学者とイギリス人家庭教師の間に、ロンドンで生まれました。裕福な家庭環境で育ち、3人の兄と4人の妹がいました。彼の妹の一人、フランシスは、著名なロセッティ家の祖となるガブリエル・ロセッティと結婚し、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティなど芸術家として名を馳せる子供たちをもうけました。この一家は、ポリドリの生涯と作品に影響を与えた可能性があります。

1810年にはエディンバラ大学に進学し、医学を学びました。1815年には医学博士号を取得しています。彼の学術的な関心は、後に彼の小説に反映されている可能性があります。

バイロンとの出会い

1816年、ポリドリの人生は大きな転換期を迎えました。著名な詩人、ジョージ・ゴードン・バイロン卿の専属医として仕えることになったのです。バイロン卿に同行してヨーロッパを旅行した彼は、スイスのディオダティ荘で、メアリー・シェリー、パーシー・ビッシュ・シェリー、クレア・クレアモントらと出会い、共に過ごしました。

このディオダティ荘での出来事が、ポリドリの小説『吸血鬼』の創作に大きく関わっています。ある夜、皆で怪奇小説の朗読会を行った後、バイロン卿は、それぞれが怪奇小説を書いてみようと提案しました。この提案を受けて、メアリー・シェリーは後の『フランケンシュタイン』につながる物語を書き始め、ポリドリはバイロン卿が書き始めた未完成の吸血鬼小説に着想を得て、『吸血鬼』を創作することになります。

『吸血鬼』の出版とその後

バイロン卿に解雇された後、ポリドリはイギリスに戻り、『吸血鬼』を執筆しました。しかし、出版にあたっては紆余曲折がありました。当初はバイロン卿の作品として発表され、後にポリドリの作品であると明らかにされましたが、混乱は長く続きました。それでも、『吸血鬼』はバイロン卿の作品と誤解されながらも、大きな成功を収めました。

1821年には、匿名で長編詩『天使の堕落』を発表しましたが、その後まもなく、鬱病と多額の借金に苦しみ、26歳という若さで亡くなりました。死因は自殺と推測されましたが、公式には自然死とされています。

ポリドリと吸血鬼文学

ポリドリの『吸血鬼』は、近代吸血鬼小説の先駆けとして、非常に大きな影響を与えました。それまでの吸血鬼の描写とは異なり、より洗練され、魅力的な吸血鬼像が描かれ、後の吸血鬼小説に大きな影響を与えました。彼は、吸血鬼を単なる悪役として描くのではなく、複雑な魅力を持つ存在として描きました。これは、後の吸血鬼文学における重要な転換点となりました。

ポリドリの短い生涯は、多くの謎に包まれています。しかし、彼の残した作品は、今もなお、世界中の読者を魅了し続けています。彼の功績は、近代吸血鬼文学の礎を築いたことにあり、その功績はこれからも忘れられることはないでしょう。

もう一度検索