ジョン・マグロー

ジョン・マグロー：勝利を追求した伝説の監督

ジョン・ジョセフ・マグロー（John Joseph McGraw, 1873年4月7日 - 1934年2月25日）は、アメリカ合衆国ニューヨーク州出身のプロ野球選手（三塁手）であり、後に名監督としてその名を馳せました。右投げ左打ちで、その愛称は"Muggsy"（マグジー）や"Little Napoleon"（リトル・ナポレオン）。勝利至上主義を貫き、ニューヨーク・ジャイアンツを10度のリーグ制覇に導いた、まさに「猛将」と呼ぶにふさわしい人物です。

選手としてのキャリア（1891～1903年）

1891年、18歳でアメリカン・アソシエーションのボルチモア・オリオールズに入団。1893年からは、その才能を開花させます。チームメイトのウィリー・キーラーと同様に、マグローも「ボルチモア・チョップ」と呼ばれる、地面に叩きつけて内野安打を稼ぐ打法を得意とし、高い打率を誇りました。また、四球を多く選ぶプレースタイルも持ち味で、1893年以降9年連続で打率3割を超え、出塁率は1896年を除き、1902年まで毎年.450以上を記録しました。1899年には、オリオールズの監督を兼任し、この年には打率.391、出塁率.547という驚異的な数字を残しています。

1899年にボルチモア球団が解散した後、セントルイスを経て、1901年に新設されたアメリカンリーグへ。しかし、リーグ顧問のバン・ジョンソンとの関係が悪化し、同年中にニューヨーク・ジャイアンツへ移籍。1906年まで選手として試合に出場しますが、1903年以降は監督業に専念するようになります。

監督としての輝かしい時代（1899～1932年）

1899年、25歳という若さでボルチモア・オリオールズの監督を兼任。ニューヨーク・ジャイアンツの監督としては、1903年に前年最下位だったチームを2位に躍進させ、1904年、1905年とリーグを連覇。1904年のリーグ制覇時には、ワールドシリーズでのボストン・アメリカンズ（現レッドソックス）との対戦を拒否したというエピソードも残っています。

その後も、1911年からの3連覇、1921年からの4連覇を含む、計10回のリーグ制覇を達成。1913年には、ニューヨーク・ジャイアンツとシカゴ・ホワイトソックスの選手を中心とした世界周遊チームを率いて来日し、親善試合を行いました。

ジャイアンツ監督在任30年のうち、チームがAクラス（上位4位）を逃したのはわずか4回。1919年からはオーナー兼ゼネラルマネージャーも兼任しました。また、選手時代を含め、計131回の退場処分を受けており、この記録は2007年にボビー・コックスが更新するまで、メジャーリーグ最多でした。

引退、そして伝説へ

1932年シーズン後、ジャイアンツの監督をビル・テリーに譲り、退任。そのニュースはニューヨーク・タイムズの一面を飾りました。1933年には、第1回オールスターゲームでナショナルリーグの指揮を執り、これが最後の仕事となりました。1934年2月25日、脳内出血のため60歳で死去。

1937年にはアメリカ野球殿堂入りを果たし、その功績は永遠に称えられています。彼の死後、契約を検討していたアフリカ系アメリカ人選手の一覧が発見されたことも、特筆すべき点でしょう。
監督としての通算勝利数2763勝は、当時コニー・マックに次ぐ歴代2位でしたが、2021年にトニー・ラルーサに抜かれました。

ジャイアンツはマグローの功績を称え、在籍時のフランチャイズであるニューヨークの二文字『NY』を、クリスティ・マシューソンと共に永久欠番扱いとしています。

勝利至上主義と革新的な戦術

「勝てばいいんだ」という言葉を体現し、勝利への執念から数々の戦術を考案。現役時代には、三塁を回る相手選手の邪魔をしたり、タッチアップしようとする選手のベルトを引っ張ったり、本塁突入時には体当たりを厭わなかったといいます。

ボルチモア・オリオールズ時代には、ネッド・ハンロン監督と共に様々な戦術を生み出しました。外野手からの返球を内野手が中継する「カットオフ・プレー」や、ウィリー・キーラー考案の「ボルチモア・チョップ」、そしてヒットエンドランを戦術として完成させたのもこの時期です。

中には、「悪知恵」とも言える戦術も存在しました。相手チームのバントがファウルになるよう、グラウンドキーパーに三塁線沿いの傾斜を作らせたり、本拠地の外野の芝を深くしてボールを隠し、偽のボールを送球する策略も試みられました。

人物像

映画『フィールド・オブ・ドリームス』に登場するムーンライト・グラハムは、マグロー監督下のジャイアンツで1905年に1試合だけ出場した選手です。

1911年には、チャーリー・ヴィクター・ファウストという男の予言を信じ、彼をチームのお守りとしてベンチ入りさせました。その結果、ジャイアンツはリーグ3連覇を達成。

また、1901年には史上初のネイティブアメリカン選手を登録しようとしましたが、人種差別により実現せず。1905年には日系アメリカ人の勧誘を試みるも、同様の理由で入団は叶いませんでした。

1932年に監督を退任する際、後継者としてフレディ・リンドストロムではなく、確執のあったビル・テリーを指名したことも、彼の人物像を物語るエピソードと言えるでしょう。

ジョン・マグローは、その勝利への飽くなき追求と、革新的な戦術、そして型破りな人物像で、野球史に燦然と輝く存在です。彼の残した功績は、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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