ジョン王 (シェイクスピア)

シェイクスピアの歴史劇『ジョン王』

『ジョン王』（原題：King John）は、ウィリアム・シェイクスピアによって書かれた歴史劇です。正式な題名は『ジョン王の生と死』（The Life and Death of King John）といいます。この劇は、イングランド史上、最も悪評の高い王の一人であるジョン王（在位1199年 - 1216年）を主人公としています。

材源

シェイクスピアは、この劇を書くにあたり、1589年頃に書かれた『ジョン王の乱世』という劇を参考にしたと考えられています。多くの研究者は、シェイクスピアが『ジョン王の乱世』を基にして、この作品を作り上げたと考えています。しかし、シェイクスピアの作品が先だったという意見や、シェイクスピアが初期のヴァージョンを改訂したという説もあります。

また、ラファエル・ホリンシェッドの『年代記』、ジョン・フォックスの『殉教者列伝』、マシュー・ペリーの『Historia Maior』といった歴史書も、この劇の材源となった可能性があります。

創作年代とテキスト

『ジョン王』は、1598年には既に存在していました。同年のフランシス・ミアズの著作に、シェイクスピアの戯曲リストの中に『ジョン王』が含まれているからです。しかし、当時上演されたという記録は残っていません。この劇が初めて印刷されたのは、1623年の「ファースト・フォリオ」でした。研究者の間では、この劇は1595年か1596年頃に書かれたと考えられています。

上演史

17世紀には、『ジョン王』が人気を博していたことが、当時の記録から伺えます。しかし、現存する最も古い上演記録は、1737年のドルリー・レーン劇場での公演です。1745年には、ジャコバイト蜂起の影響もあり、複数の劇場で競うように上演されました。19世紀には、史実に基づいた演出も試みられました。しかし、その後はシェイクスピア作品の中でも上演機会の少ない劇となっています。それでも、20世紀にはロバート・B・マンテルやピーター・ブルックによる上演があり、1899年にはサイレント映画化もされました。また、テレビドラマとしても2度映像化されています。

登場人物

主な登場人物は以下の通りです。

ジョン王（KING JOHN）：イングランド王。
王子ヘンリー（PRINCE HENRY）：ジョンの息子。
アーサー（ARTHUR）：ブルターニュ公。王位継承権を持つ。
ペンブルック伯（Earl of Pembroke）
エセックス伯（Earl of Essex）
ソールズベリー伯（Earl of Salisbury）
ビゴット卿（Lord BIGOT）：ノーフォーク伯。
ヒューバート・ド・バラ（HUBERT DE BURGH）：ジョンの腹心。
ロバート・ファルコンブリッジ（ROBERT FALCONBRIDGE）：騎士。
フィリップ・ザ・バスタード（PHILIP the Bastard）：リチャード1世の非嫡出子。
フランス王フィリップ（PHILIP, King of France）
王太子ルイ（LOUIS, the Dauphin）
枢機卿パンダルフ（CARDINAL PANDULPH）：教皇特使。
王太后エリナー（QUEEN ELINOR）：ジョン王の母。
コンスタンス（CONSTANCE）：アーサーの母。

他にも多くの貴族や市民、兵士などが登場します。

あらすじ

物語は、正当な王位継承者であるアーサーを差し置いて、ジョンがイングランド王になったことから始まります。アーサーの母コンスタンスは、フランス王に助けを求め、イングランドとフランスの間で戦争が起こりかけます。しかし、両国の王は互いの利益のために和解し、アーサーはイングランドに連れて行かれることになります。その後、ジョンは教皇と対立し、破門されます。これを機に、フランスは平和条約を破り、イングランドを攻撃します。ジョンはアーサーを殺害しようとしますが、ヒューバートによって救われます。しかし、アーサーは自ら命を絶ち、ジョンは追い詰められた末に病死します。

評価

ヴィクトリア朝時代には、スペクタクルな演出が観客の心を捉え、盛んに上演されました。しかし、現在では、シェイクスピアの作品の中でも、あまり人気がなく、上演機会も少なくなっています。

日本語訳テキスト

坪内逍遥訳「ヂョン王」
北川悌二訳『世界古典文学全集 第45巻 シェイクスピアⅤ』
小田島雄志訳
田中晏男訳
松岡和子訳

外部リンク

Complete Text of King John at MIT
King John - plain vanilla text from Project Gutenberg
The life and death of King John - HTML version of this title.
劇団シェイクスピアシアター

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