ファースト・フォリオ

ファースト・フォリオ、正式名称を「ウィリアム・シェイクスピアの喜劇、史劇、悲劇」というこの書籍は、シェイクスピアの没後7年、1623年に同僚のジョン・ヘミングスとヘンリー・コンデルによって出版されました。これは、シェイクスピアの戯曲をまとめた最初の作品集であり、当時の価格は1ポンドでした。これは現代の貨幣価値に換算すると、約95から100ポンド、または170から190USドルに相当します。

このフォリオ判（二つ折り判）の書籍には、当時知られていたシェイクスピアの戯曲37編のうち、『ペリクリーズ』を除く36編が収録されています。特に重要なのは、『マクベス』や『十二夜』など、この全集がなければ失われていた可能性のある作品が含まれている点です。これらの作品は、ファースト・フォリオによって後世に伝えられることになりました。

『ペリクリーズ』が収録されなかった理由は、この作品の真作性が疑わしいとされたためです。研究者の間では、「『ペリクリーズ』は別人の作品で、シェイクスピアは脚色しただけだ」とか「別人とシェイクスピアの合作である」など、様々な説が議論されてきましたが、結論は出ていません。後の研究では、『ペリクリーズ』以外にも、ファースト・フォリオに収録されていないシェイクスピアと他の作家との合作や、シェイクスピアが手を加えた他人の作品と思われるものが発見されています。これらの作品は、真作である「正典（Canon）」に対して「外典（Apocrypha）」と呼ばれています。

ファースト・フォリオは約750部が印刷されたとされていますが、2020年現在で現存が確認されているのはわずか235部で、そのうち完全な形を保っているのは56部のみです。この希少性が、ファースト・フォリオの価値を高めています。

2020年10月14日には、初版本が997万ドル（約10億5000万円）で落札され、これは文学作品としては史上最高額となりました。この記録からも、ファースト・フォリオが文学史においていかに重要で、価値の高いものであるかがわかります。ファースト・フォリオは、単なる書籍の域を超え、シェイクスピア作品を理解する上で欠かせない、文化遺産としての価値を持っていると言えるでしょう。

関連事項として、シェイクスピアの初期のテキスト、初期近代英語、書籍に関する世界一の一覧などが挙げられます。

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