ジョヴァンニ・ジローラモ・カプスペルガー

ジョヴァンニ・ジローラモ・カプスペルガー（イタリア語: Giovanni Girolamo Kapsperger、ドイツ語: Johannes Hieronymus Kapsberger, 1580年頃 - 1651年）は、17世紀初頭のイタリア初期バロック音楽において重要な足跡を残した作曲家であり、またリュート、テオルボ、キタローネといった大型の撥弦楽器の驚異的な演奏家（ヴィルトゥオーソ）としても名を馳せました。

彼の生い立ちには特異な点があります。ドイツの貴族を父に持ち、ドイツ語の姓を持っていたにもかかわらず、生まれたのはイタリアのヴェネツィアであったため、イタリア語名で広く知られることとなりました。彼の演奏技術は非常に高く評価され、その華麗さと巧みさは瞬く間に評判となり、当時の上流階級から深い尊敬を集めるに至りました。

特に、1610年頃からローマを活動の拠点に移してからは、その人気は決定的なものとなります。ローマ教皇庁の宮廷を含むイタリアの中心的な音楽シーンにおいて、カプスペルガーは演奏家として絶大な影響力を持つ存在となりました。彼の定期的な演奏は、多くの聴衆を魅了し、当時の音楽様式の発展にも間接的に寄与したと考えられます。

作曲家としても精力的に活動したカプスペルガーは、生前に複数の作品集を出版しています。これらの出版譜には、リュートやキタローネのために書かれた、プレリュード、トッカータ、舞曲、変奏曲など、多種多様な形式の小品が含まれています。これらの器楽曲は、彼自身の演奏家としての視点と、楽器の可能性を最大限に引き出すための革新的なアイデアに満ちています。彼の作品を通じて、当時のリュート族楽器の表現力の幅広さを知ることができます。一方で、彼が作曲した少数の声楽曲は、器楽曲ほどには評価されなかったようです。

カプスペルガーの音楽スタイルを特徴づけるのは、その大胆な実験精神です。彼はしばしば、予期せぬリズムのパターンや、聴き手を驚かせるような和声の動きを取り入れました。旋律線はしばしば力強く、前へと進む推進力を持ち、作品全体には尽きることのない創意が息づいています。これらの個性的な特徴は、特に彼が作曲した一連の舞曲作品において顕著に表れています。彼の舞曲は、単なる伴奏音楽としてではなく、それ自体が独立した芸術作品として成り立つほどの複雑さと魅力を備えています。

同時代のリュート奏者兼作曲家であるアレッサンドロ・ピッチニーニと並んで、カプスペルガーは17世紀初頭におけるリュート音楽の最も進歩的な作曲家の一人として位置づけられています。彼は単に既存の音楽語法を踏襲するだけでなく、新たな表現を追求し、楽器の性能や演奏技術の発展にも積極的に貢献しました。彼の作品は、初期バロックにおけるリュート音楽の多様性と革新性を示す貴重な資料として、今日でも研究され、演奏されています。彼の生涯と功績は、この時代の器楽の発展を理解する上で不可欠なものです。

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