アレッサンドロ・ピッチニーニ

アレッサンドロ・ピッチニーニ（1566年12月30日 - 1638年頃没）は、イタリア後期ルネサンスから初期バロックにかけて活動した著名なリュート奏者、テオルボ奏者、そして作曲家です。彼は同時代のジョヴァンニ・ジローラモ・カプスペルガーと並び称されるほどの名手でした。

ピッチニーニは1566年末にボローニャで生まれました。彼の家系はリュート奏者の血筋であり、父レオナルド・マリアもリュート奏者としてアレッサンドロに初期の指導を与えたと考えられています。兄弟のジローラモ、フィリッポ、そして息子のレオナルド・マリアもリュート奏者でした。

若い頃、彼はマントヴァ宮廷からの誘いを断り、フェラーラのエステ家宮廷に仕えていた父に同行しました。1597年に雇い主アルフォンソ2世が死去した後も、彼は父と共にフェラーラに留まり、司教ピエトロ・アルドブランディーニに仕えました。この頃のフェラーラ宮廷には、有名な音楽家ルッツァスコ・ルッツァスキがいました。1608年には、フェラーラの教皇庁大使エンツォ侯爵に従ってローマに移り、そこで同じく音楽家であったジローラモ・フレスコバルディと同僚として過ごしました。エンツォ公爵がローマを離れる1611年頃に、ピッチニーニは故郷ボローニャへ戻ったようです。彼の最期については詳細は不明ですが、書簡などの記録から1638年12月までには死去していたことが示唆されています。

ピッチニーニはその演奏技術で非常に高く評価されていました。同郷の作曲家アドリアーノ・バンキエリは、彼のリュート演奏に関して「並ぶ者はいない」と称賛しています。

彼の功績の中でも特筆されるのは、二巻にわたるタブラチュア（楽譜）集の出版です。第一巻『リュートとキタローネのためのタブラチュア集 第1巻（Intavolatura di liuto, et di chitarrone Libro primo）』は1623年にボローニャで出版され、スペイン王女イザベラに献呈されました。これにはリュートやキタローネのためのアリア、コレンテ、カンツォーナ、ガリアルダ、リチェルカーレ、トッカータなどが含まれています。特にリュート用の楽曲には、14コースの拡張バス弦付きリュート・アティオルバートを想定したものが多く、当時の標準的なリュートでは演奏が難しい曲も含まれていました。第二巻『リュートのためのタブラチュア集 第2巻（Intavolatura di liuto Libro Secondo）』は、彼の死後の1639年に息子のレオナルド・マリアによってボローニャで出版されました。こちらはすべてリュートのための楽曲集です。これらの出版譜に加え、モデナ写本にもカプスペルガーの作品と共に、ピッチニーニ作とされるキタローネ曲が収められています。

彼の作品は、ガリアルダやコレンテといった伝統的な舞曲形式と、トッカータやリチェルカーレに見られる半音階や速い走句など、鍵盤音楽の影響を受けた先進的な様式が融合しています。

第一巻の冒頭には、「学者（学生）へ」と題された全34章からなる詳細な序文が掲載されており、リュートの様々な演奏技法に関する重要な情報が提供されています。これは当時のリュート演奏法を研究する上で非常に貴重な資料となっています。

さらに、この序文の終章では、自身がアーチリュート（リュート・アティオルバート）の発明者であると主張しています。彼は1594年に拡張ネックとバス弦を追加した楽器を初めて考案したとし、一般的に使われていた「テオルボ化されたリュート」という意味の「リュート・アティオルバート」という名称は不適切であり、「アーチリュート」と呼ぶべきだと提唱しました。

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