ジョヴァンニ・マルティーニ

ジョヴァンニ・バッティスタ・マルティーニ

ジョヴァンニ・バッティスタ・マルティーニ（Giovanni Battista Martini, 1706年4月24日 - 1784年8月3日）は、18世紀イタリアのボローニャで活動した、傑出した音楽理論家であり作曲家です。「マルティーニ師（Padre Martini）」の呼び名でも広く知られています。彼は特に、厳格対位法の指導者として名を馳せ、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、ヨハン・クリスティアン・バッハ、ヨゼフ・ミスリヴェチェク、アンドレ＝エルネスト＝モデスト・グレトリといった、後に音楽史に大きな足跡を残す多くの作曲家たちを育成しました。

彼の初期の音楽教育は、ヴァイオリニストであった父アントニオ・マリア・マルティーニから音楽とヴァイオリンの基礎を学ぶことから始まりました。その後、専門的な知識を深めるため、プラディエーリ神父のもとで声楽とチェンバロを、アントニオ・リッチエーリから対位法を学びました。古典教育をオラトリオ修道会の神父たちから受けた後、ラゴのフランシスコ会修道院で修練期間に入り、1722年にはフランシスコ会士となりました。学識を認められ、1758年にはボローニャのアカデミア・フィラルモニカおよび科学研究所アッカデミアの会員に選出されています。

マルティーニ師のキャリアにおいて重要な節目となったのは、19歳という若さで1725年にボローニャのサン・フランチェスコ教会楽長に任命されたことです。この役職において彼の作曲した楽曲が注目を集め、やがて多くの音楽家たちからの要望に応えて作曲教室を開設するに至りました。音楽教師としての彼は、常にローマ楽派の古い音楽様式への強い傾倒を示していました。また、彼は熱心な音楽史料の収集家としても知られ、チャールズ・バーニーの推計によると、その蔵書数は1万7千冊にも及ぶという膨大なコレクションを築き上げました。マルティーニ師の死後、この貴重な蔵書の一部はウィーンの帝室図書館へ移され、残りはボローニャのリチェオ・ロッシーニ（現在の音楽院）に所蔵されています。

同時代の多くの音楽家たちは、マルティーニ師に対して深い敬意を払っていました。例えば、レオポルト・モーツァルトは、息子ヴォルフガングの才能について彼の見解を求めたほどです。一方で、アプト・フォーグラーのように批判的な立場をとる者もおり、彼はマルティーニ師の音楽哲学の原理に疑問を呈しました。しかし、この批判は、先行するP.ヴァロッティの議論を踏襲したものでした。

マルティーニ師が手掛けた作曲作品の中には、特に宗教曲に、いまだに出版に至っていないものが多くあります。ボローニャのリチェオ・ロッシーニには、2つのオラトリオの自筆譜が保管されており、レクイエムを含むその他の宗教曲はウィーンに現存しています。出版された作品としては、1734年にボローニャで刊行された《祝福されたる処女マリアのリタニアならびに最後のアンティフォナ》や、12曲の《器楽曲集》、1747年の6つの《鍵盤楽器のためのソナタ》、1763年の《二重奏のための室内ソナタ》などが挙げられます。

彼の業績の中でも、音楽学の分野における二つの大著は特に重要です。一つは『音楽史』（Storia delia musica, 1757年～1781年）で、これは古代の音楽に3巻を割くなど、著者の広範な調査に基づく壮大な構想を示すものでした。しかし、記述は単調で、歴史的事実としては疑問視される論題も含まれていました。各章の冒頭と末尾には謎カノンが提示され、読者が解答を見出すという形式をとっており、中には非常に難解なものもありましたが、後にルイージ・ケルビーニによってすべて解決されました。もう一つは『対位法教練』（Saggio dl contrapunto, 1774年～1775年）で、こちらは内容が豊かで実践的な価値を持つ著作です。イタリアやスペインの過去の偉大な音楽家たちの貴重な譜例と、それに対する優れた解説が収められており、主に単旋律聖歌の旋法や、それに基づいた対位法の構成法について論じられています。

なお、作曲家のジョヴァンニ・バッティスタ・サンマルティーニやジャン・ポール・マルティーニは、名前が似ていて混同されやすいですが、本稿で扱ったジョヴァンニ・バッティスタ・マルティーニとは別人です。

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