ジョージ・ロビンソン (初代リポン侯爵)

ジョージ・フレデリック・サミュエル・ロビンソン 初代リポン侯爵

イギリスの政治家、そして貴族として知られるジョージ・フレデリック・サミュエル・ロビンソン、初代リポン侯爵は、1827年10月24日にこの世に生を受け、1909年7月9日に81歳でその生涯を閉じました。彼はヴィクトリア朝からエドワード朝にかけての時代、自由党の政権において要職を数多く歴任しました。父は、かつて首相を務めたフレデリック・ジョン・ロビンソン、初代ゴドリッチ子爵（後に初代リポン伯爵）であり、リポン侯爵は父が首相官邸に在任中のダウニング街10番地で生まれました。

公教育ではなく家庭で教育を受けた彼は、青年時代にはキリスト教社会主義運動に関わり、ランカシャーやロンドンの機械工が行ったストライキに対して経済的な援助を提供するなど、労働者階級への関心と支援を示しました。政界入りは1852年、庶民院議員としてでした。その後、選挙区を移りながら議員活動を続け、1859年1月に父の死去に伴いリポン伯爵位を継承したことで貴族院議員へと転じます。同年11月には伯父の死去によりド・グレイ伯爵位も継承し、複数の爵位を持つことになりました。

自由党政権下では、1863年から1866年まで陸軍大臣、1866年には短期間ながらインド担当大臣を務めるなど、閣僚経験を積みました。そして、彼の経歴において最も重要なポストの一つとなったのが、1880年6月に就任したインド総督（副王）でした。

インド総督に就くと、リポン卿はまず前任のリットン伯爵が始めた第二次アフガン戦争の収束に取り組みました。反イギリス感情が強いアイユーブ・ハーンがカンダハルへの侵攻を図る情勢下、彼はアフガンを統治する能力があると見られていたアブドゥッラフマーン・ハーンと交渉し、イギリス以外の国と外交関係を持たないことを条件に彼をアフガン王として認めました。これにより和平への道筋をつけ、さらに彼の許可を得てフレデリック・ロバーツ将軍率いる部隊が出撃し、アブドゥッラフマーン軍と協力してアイユーブ軍を打ち破ることに成功しました。

内政においては、自由主義者としての信念に基づき、積極的な改革を断行しました。前総督によって制定されていた言論統制法を廃止し、報道の自由を回復させました。また、各州への地方自治権の導入を目指すなど、インドの自律的な発展を促そうとしました。特に象徴的な改革案として、1883年にインバート法案を起草しました。これは、それまでインド人判事がイギリス人を裁くことができなかった状況を改め、イギリス人が被告の場合でもインド人判事が裁判を担当できるようにする画期的な試みでした。しかし、この法案は在印イギリス人社会から猛烈な反発を招き、さらに本国からも強い抵抗を受け、最終的には大幅に骨抜きにされる形となりました。

インバート法案を巡る騒動にもかかわらず、リポン卿のこうした親インド的な政策や姿勢は、多くのインド人から深い敬愛を集めました。彼は歴代のイギリス人インド総督の中でも、インドにおける評判が非常に良い数少ない人物の一人として記憶されています。しかし、イギリス本国、特に在印イギリス人からは強い反感を買うことも少なくありませんでした。カルカッタにリポン卿の銅像を建立する計画が持ち上がった際、寄付金のほとんどがインド人から寄せられ、イギリス人からの寄付はほとんどなかったというエピソードは、彼の両者からの評価の違いを物語っています。

1884年末、当時の庶民院解散の可能性が高まったことから、保守党政権による後任総督任命を避けるため、リポン卿は任期満了を半年早めてインド総督を退任し帰国しました。帰国後も彼は政界に留まり、1886年には海軍大臣、1892年から1895年には植民地大臣、そして1905年から1908年までは王璽尚書を務めるなど、自由党内閣の要職を歴任しました。

リポン卿の人物像として特筆すべきは、宗教的な側面です。彼は長年、フリーメイソンにおいて最高位であるイングランド・連合グランドロッジのグランドマスターを務めるほどでしたが、1874年にカトリックに改宗しました。イギリスがプロテスタントを国教とする中で、貴族がカトリックに改宗するのは異例のことであり、特にヴィクトリア女王はカトリックに対して強い嫌悪感を抱いていたため、リポン卿は女王から非常に疎まれることとなりました。女王は彼を重要なポストに就ける人事案に対して、しばしば難色を示したと言われています。歴代のインド総督の中でも、カトリックであったのは彼一人だけです。

彼は1851年にヘンリエッタ・アン・テオドシア・ヴィナーと結婚し、二人の間に一男一女を儲けました。長男のフレデリック・オリヴァー・ロビンソンは父の死後、第2代リポン侯爵を継承しています。

リポン侯爵ジョージ・フレデリック・サミュエル・ロビンソンは、自由主義者としてインド統治に改革をもたらし、多くのインド人から尊敬を集めた一方で、カトリックへの改宗という個人的な決断が、イギリス社会における彼の立場や評価に複雑な影響を与えた、多面的な政治家でした。

栄典

1859年1月28日: 第2代リポン伯爵、第2代ゴドリッチ子爵
1859年11月14日: 第3代ド・グレイ伯爵、第4代グランサム男爵、第7代(ニュービーの)準男爵
1869年12月11日: ガーター騎士団ナイト（KG）
1871年6月23日: 初代リポン侯爵

（爵位は全て連合王国貴族爵位、グランサム男爵はグレートブリテン貴族爵位、準男爵位はイングランド準男爵位）

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