ジョージ・ロムニー (画家)
ジョージ・ロムニー（George Romney, 1734年12月26日 - 1802年11月15日）は、18世紀のイギリスを代表する肖像画家の一人です。同時代のトマス・ゲインズバラやジョシュア・レノルズと並び、当時から高い評価を受けていました。
ロムニーは、イングランド北西部のランカシャー州ダルトン・イン・ファーネスで生まれました。父親は家具職人であり、ロムニーも当初は家業を手伝っていました。11歳まで学校に通った後、父親の徒弟となります。しかし、絵画への情熱を抑えきれず、1755年には巡回肖像画家のクリストファー・スティールに師事するため、ケンダルへ移りました。
ロムニーは巡回絵師として北イングランドを回り、肖像画を描き始めました。初期の作品は明るい色調で、師のスティールやアーサー・デヴィスの影響が見られます。この時期には、シェイクスピアを題材にした実験的な作品も制作していました。見習い期間中に病気で倒れた際には、女家主の娘メアリー・アボットに手厚く看護され、1756年に結婚しました。同年に長男ジョンが誕生。翌年、スティールとの師弟関係を解消し、ケンダルやランカスターで肖像画家としての名声を確立しました。
1762年、ロムニーは歴史画家としての成功を夢見て単身ロンドンへ移ります。同年、彼の作品「ウルフ将軍の死」が王立芸術家協会から賞を得ましたが、歴史画家としての生活は安定せず、二度もケンダルに戻らざるを得ませんでした。家族とはこの頃から長い別れとなります。1764年には初の海外旅行でパリを訪問し、クロード＝ジョゼフ・ヴェルネと親交を結びました。1765年に再び賞を獲得すると、ロンドンに居を構え、肖像画家として成功を収めます。ロムニーはモデルの個性や内面を理想化して描くことを得意としました。
ロムニーは、その功績にもかかわらず、王立芸術院への入会を求められることはなく、彼自身も入会を望みませんでした。この件については、様々な憶測がありますが、彼は優れた芸術家は組織に属さなくても成功できると信じており、その信念を貫きました。晩年には、このことについて僅かな遺憾の意を表明しています。
1773年、ロムニーは古典に対する知識の不足を自覚し、画家オージアス・ハンフリーと共にイタリアへ旅立ちました。ローマではバチカン美術館のフレスコ画を、ヴェネツィアではティツィアーノの絵画を、パルマではコレッジョの作品を研究しました。2年間の滞在後、ロンドンに戻り、キャヴェンディッシュ・スクエアに邸宅を構えました。この旅行を通して、彼の芸術はより成熟し、ロンドンで最先端の肖像画家としての地位を確立しました。メアリー・モーザーなど、同時代の多くの著名人を描いています。
ロムニーは、生活のために肖像画を描きながらも、文学的な主題の作品を制作することを強く望んでいました。1782年4月、友人のチャールズ・グレヴィル卿の紹介で、新しい愛人エマ・ハート（後のエマ・ハミルトン）と出会います。当時17歳だったエマは、ロムニーにとって女神のような存在となり、彼の芸術に大きなインスピレーションを与えました。ロムニーはエマを様々なポーズで60作以上も描きました。これらの作品は、単なる肖像画にとどまらず、寓話、神話、宗教的なイメージを具現化したものでした。エマは1782年から1786年まで、約180回もロムニーのモデルを務めました。その後、エマはナポリへ渡り、ウィリアム・ダグラス・ハミルトン卿の愛人となりましたが、1791年にハミルトン卿と結婚するためにイギリスへ戻り、ロムニーのもとで34回モデルを務めました。結婚式の日に一度だけ「ハミルトン夫人」としてロムニーの前に座り、その後二度と会うことはありませんでした。
エマとの出会いは、ロムニーに長年の夢であった歴史的・文学的主題の絵画を描くきっかけを与えました。彼は、ジョン・ボイデルの「ボイデル・シェイクスピア・ギャラリー」のために、シェイクスピアの戯曲をテーマにした作品を多く描きました。ロムニーの作品は、精神的な深さが完成された肖像画よりも未完成のスケッチに見られるという評価もあります。ヴィクトリア時代には、彼とエマ・ハミルトンの関係が評価を下げましたが、20世紀に入り、彼の円熟期の作品は、ウィリアム・ブレイクやジョン・フラックスマンなど、後世の芸術家にも影響を与えたとして再評価されています。
1794年、ロムニーは体調を崩し、肖像画の仕事を縮小し始めました。1799年夏、約40年ぶりにケンダルに戻り、家族と再会しました。彼は献身的な妻に快く迎えられ、1802年11月15日に67歳で息を引き取りました。遺体はランカシャー州ダルトンに埋葬されました。彼の妻は97歳という長寿を全うしました。
ロムニーの主な作品には以下のようなものがあります。
エマ・ハミルトンをモデルとした一連の作品
「ウルフ将軍の死」
シェイクスピアの戯曲を題材とした作品
これらの作品は、ロムニーの卓越した画力と、その芸術に対する情熱を今に伝えています。
ロムニーの作品は、以下のような美術館に所蔵されています。
ナショナル・ポートレート・ギャラリー (ロンドン)
テート・ブリテン (ロンドン)
ナショナル・ギャラリー (ロンドン)
多くの海外美術館
The Romney Society (英語)
George Romney, a biography, NATIONAL MUSEUMS LIVERPOOL (英語)
Emma Hamilton and George Romney, NATIONAL MUSEUMS LIVERPOOL (英語)
* George Romney (1734-1802), The website of Bob Speel (英語)
生い立ちと初期の画業
ロムニーは、イングランド北西部のランカシャー州ダルトン・イン・ファーネスで生まれました。父親は家具職人であり、ロムニーも当初は家業を手伝っていました。11歳まで学校に通った後、父親の徒弟となります。しかし、絵画への情熱を抑えきれず、1755年には巡回肖像画家のクリストファー・スティールに師事するため、ケンダルへ移りました。
ロムニーは巡回絵師として北イングランドを回り、肖像画を描き始めました。初期の作品は明るい色調で、師のスティールやアーサー・デヴィスの影響が見られます。この時期には、シェイクスピアを題材にした実験的な作品も制作していました。見習い期間中に病気で倒れた際には、女家主の娘メアリー・アボットに手厚く看護され、1756年に結婚しました。同年に長男ジョンが誕生。翌年、スティールとの師弟関係を解消し、ケンダルやランカスターで肖像画家としての名声を確立しました。
ロンドンでの活動
1762年、ロムニーは歴史画家としての成功を夢見て単身ロンドンへ移ります。同年、彼の作品「ウルフ将軍の死」が王立芸術家協会から賞を得ましたが、歴史画家としての生活は安定せず、二度もケンダルに戻らざるを得ませんでした。家族とはこの頃から長い別れとなります。1764年には初の海外旅行でパリを訪問し、クロード＝ジョゼフ・ヴェルネと親交を結びました。1765年に再び賞を獲得すると、ロンドンに居を構え、肖像画家として成功を収めます。ロムニーはモデルの個性や内面を理想化して描くことを得意としました。
ロムニーは、その功績にもかかわらず、王立芸術院への入会を求められることはなく、彼自身も入会を望みませんでした。この件については、様々な憶測がありますが、彼は優れた芸術家は組織に属さなくても成功できると信じており、その信念を貫きました。晩年には、このことについて僅かな遺憾の意を表明しています。
イタリア旅行と画風の成熟
1773年、ロムニーは古典に対する知識の不足を自覚し、画家オージアス・ハンフリーと共にイタリアへ旅立ちました。ローマではバチカン美術館のフレスコ画を、ヴェネツィアではティツィアーノの絵画を、パルマではコレッジョの作品を研究しました。2年間の滞在後、ロンドンに戻り、キャヴェンディッシュ・スクエアに邸宅を構えました。この旅行を通して、彼の芸術はより成熟し、ロンドンで最先端の肖像画家としての地位を確立しました。メアリー・モーザーなど、同時代の多くの著名人を描いています。
エマ・ハミルトンとの出会い
ロムニーは、生活のために肖像画を描きながらも、文学的な主題の作品を制作することを強く望んでいました。1782年4月、友人のチャールズ・グレヴィル卿の紹介で、新しい愛人エマ・ハート（後のエマ・ハミルトン）と出会います。当時17歳だったエマは、ロムニーにとって女神のような存在となり、彼の芸術に大きなインスピレーションを与えました。ロムニーはエマを様々なポーズで60作以上も描きました。これらの作品は、単なる肖像画にとどまらず、寓話、神話、宗教的なイメージを具現化したものでした。エマは1782年から1786年まで、約180回もロムニーのモデルを務めました。その後、エマはナポリへ渡り、ウィリアム・ダグラス・ハミルトン卿の愛人となりましたが、1791年にハミルトン卿と結婚するためにイギリスへ戻り、ロムニーのもとで34回モデルを務めました。結婚式の日に一度だけ「ハミルトン夫人」としてロムニーの前に座り、その後二度と会うことはありませんでした。
エマとの出会いは、ロムニーに長年の夢であった歴史的・文学的主題の絵画を描くきっかけを与えました。彼は、ジョン・ボイデルの「ボイデル・シェイクスピア・ギャラリー」のために、シェイクスピアの戯曲をテーマにした作品を多く描きました。ロムニーの作品は、精神的な深さが完成された肖像画よりも未完成のスケッチに見られるという評価もあります。ヴィクトリア時代には、彼とエマ・ハミルトンの関係が評価を下げましたが、20世紀に入り、彼の円熟期の作品は、ウィリアム・ブレイクやジョン・フラックスマンなど、後世の芸術家にも影響を与えたとして再評価されています。
晩年と死
1794年、ロムニーは体調を崩し、肖像画の仕事を縮小し始めました。1799年夏、約40年ぶりにケンダルに戻り、家族と再会しました。彼は献身的な妻に快く迎えられ、1802年11月15日に67歳で息を引き取りました。遺体はランカシャー州ダルトンに埋葬されました。彼の妻は97歳という長寿を全うしました。
主な作品
ロムニーの主な作品には以下のようなものがあります。
エマ・ハミルトンをモデルとした一連の作品
「ウルフ将軍の死」
シェイクスピアの戯曲を題材とした作品
これらの作品は、ロムニーの卓越した画力と、その芸術に対する情熱を今に伝えています。
所蔵美術館
ロムニーの作品は、以下のような美術館に所蔵されています。
ナショナル・ポートレート・ギャラリー (ロンドン)
テート・ブリテン (ロンドン)
ナショナル・ギャラリー (ロンドン)
多くの海外美術館
外部リンク
The Romney Society (英語)
George Romney, a biography, NATIONAL MUSEUMS LIVERPOOL (英語)
Emma Hamilton and George Romney, NATIONAL MUSEUMS LIVERPOOL (英語)
* George Romney (1734-1802), The website of Bob Speel (英語)
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。