ジョー・メデル

1938年 3月19日にメキシコシティで生まれたジョー・メデル（本名ホセ・メデル）は、高度なボクシング技術と、特にロープ際で見せる絶妙なカウンターパンチを最大の武器としたプロボクサーです。その巧みな戦術から「ロープ際の魔術師」という異名で知られ、世界バンタム級で最高位1位にランクされました。彼のキャリアは、故郷メキシコ国内での成功に加え、特に日本における活躍が特筆されます。

人物とスタイル

メデルのボクシングは、相手の攻撃を受け流し、ロープに下がりながら隙を突くカウンターパンチに真骨頂がありました。相手が攻め込んできたところに、正確かつ強烈な一撃を突き刺し、ダウンを奪うスタイルは観る者を魅了しました。特に、日本には度々来日し、ファイティング原田や関光徳といった当時の日本のトップボクサーたちと激闘を繰り広げました。これらの試合でロープ際のカウンターから勝利を収めた姿は、日本のボクシングファンに強い印象を与え、多くの日本人から愛される外国人ボクサーの一人となりました。メデルがプロキャリアの終着点に選んだのも、日本のリングでした。

経歴

メデルのプロキャリアは、1955年 3月19日のデビュー戦での3回KO負けというほろ苦いスタートでした。しかし、その後は着実に実力をつけ、1957年には後の世界王者ジョー・ベセラと3度対戦するなど、国内の強豪との経験を積みました。1959年8月にはホセ・ロペスを判定で破り、メキシコバンタム級王座を獲得。翌年には同国人のライバル、エロイ・サンチェス相手にこの王座を防衛しています。

世界レベルでの試練は早く訪れました。1960年8月、後の「黄金のバンタム」エデル・ジョフレと対戦。善戦するも、10回にKO負けを喫します。しかし、この敗北はメデルの経験値を高めました。

1961年8月には初来日。関光徳との対戦では、メデルをロープに詰めた関がフィニッシュに踏み込んだ瞬間に、電光石火の右カウンターを炸裂させてKO勝利。日本のファンにその「魔術師」ぶりを鮮烈に示しました。その後も東洋ジュニアフェザー級王者坂本春夫や世界フライ級1位の矢尾板貞雄といった日本のトップ選手に判定勝ちを収め、日本のリングで高い評価を確立します。

1962年9月には世界バンタム級王者となっていたエデル・ジョフレにサンパウロで挑みますが、全盛期の王者の前に6回KO負けを喫し、世界の壁に跳ね返されました。

しかし、メデルの日本のファンへのアピールは続きます。1963年9月、後に世界王者となるファイティング原田と対戦。原田の猛攻に晒されながらも、6回に得意のカウンターを突き刺し、鮮やかなKO勝利を収めました。この勝利はメデルの名声を一層高めました。

1967年1月、今度は原田が世界王者として君臨するバンタム級王座に挑戦するため、愛知県体育館のリングに上がりました。4年ぶりの再戦となったこの試合で、原田は前回の敗戦を教訓に、メデルのカウンターを封じる巧みなアウトボクシングを展開。中間距離での打ち合いを避け、クリンチを多用するなどメデルのペースを乱しました。メデルも粘りを見せ、最終回にはカウンターで原田をぐらつかせた場面もありましたが、及ばず15回判定負け。またしても世界王座獲得はなりませんでした。

キャリア晩年には、後の世界王者ルーベン・オリバレスに敗れるなどしましたが、日本のファンにとってメデルは特別な存在であり続けました。1974年6月、36歳となったメデルは現役最後の試合のために再び来日し、後楽園ホールでロイヤル小林と対戦。年齢を感じさせないカウンターの冴えを見せるも、負傷により6回終了TKO負け。試合後のリング上でメデルは引退を発表し、万雷の拍手の中、テンカウントのゴングを聞いて長きにわたるプロキャリアに終止符を打ちました。

エピソード

メデルの死後、彼が晩年を過ごした地区では、彼の功績を称え、優秀なスポーツ選手に送られる奨学金にその名が冠されています。
WBCはボクシング界への多大な貢献を讃え、メデルに記念のチャンピオンベルトを贈りました。
* 現役引退後、一時的に日本に滞在し、日本のボクシングジムでトレーナーとして後進の指導にあたった時期もありました。

ジョー・メデルは、その独特なスタイルと日本での印象的な活躍により、今なお多くのボクシングファンの記憶に残る伝説的なボクサーです。

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