ジルベール・アミ

ジルベール・アミ（Gilbert Amy, 1936年8月29日 - ）は、フランスの作曲家、そして指揮者です。パリに生まれた彼は、第二次世界大戦後のフランス現代音楽シーンにおいて、創作活動だけでなく、指揮、教育、さらには音楽組織の運営といった多角的な側面から大きな足跡を残した人物です。

経歴

アミの音楽の道は、1954年にパリ国立高等音楽院に入学したことから始まります。彼はここで、当時のフランス楽壇を代表する二人の巨匠、オリヴィエ・メシアンとダリユス・ミヨーに作曲を学び、イヴォンヌ・ロリオからはピアノを師事しました。この学びが、彼のその後の多才なキャリアの礎となります。1955年には最初の作品を発表し、作曲家としての歩みを始めました。

彼のキャリアにおける決定的な出会いは、1957年のピエール・ブーレーズとの交流です。前衛音楽の牽引者であったブーレーズの指導のもと、《ピアノ・ソナタ》を完成させ、才能を高く評価されました。翌年にはブーレーズからの委嘱を受け、17楽器のための《躍動（Mouvements）》を作曲。この作品は、1958年にダルムシュタット現代音楽講習会で行われたブーレーズ主宰の「ドメーヌ・ミュジカル」の演奏会で初演され、国際的な注目を集めました。アミ自身も、1958年から1961年にかけてダルムシュタット講習会でカールハインツ・シュトックハウゼンの指導を受け、その音楽語法を深めました。

1960年代以降、アミは指揮者としても精力的に活動するようになります。1962年には、高名な演出家ジャン＝ルイ・バローに指名され、パリ・オデオン座の座付き音楽監督に就任。これを機に、ヨーロッパ各地やアルゼンチンで指揮台に立つ機会が増えました。また、ブーレーズが創設した現代音楽の演奏団体「ドメーヌ・ミュジカル」においては、1967年から1973年までブーレーズの後任として監督を務め、現代音楽の普及・振興に貢献しました。さらに、フランスの公共放送局においても要職を歴任。1973年から1975年までフランス放送協会の音楽顧問、1976年から1981年までフランス放送新フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務めるなど、フランス楽壇の中枢でその手腕を発揮しました。

1984年には、リヨン国立高等音楽院の院長に就任し、後進の指導にも力を注ぎました。院長として教育体制の充実に尽力しつつ、作曲活動も継続。その長年の功績に対し、多くの栄誉が与えられました。SACEM音楽大賞（1972年、1983年）、国家音楽大賞（1979年）、パリ市音楽大賞（1986年）、そして全功績に対して贈られたシノ・デル・ドゥーカ賞（2004年）など、その受賞歴は華々しいものです。近年は、自身の創作活動に加え、音楽理論の分野にも関心を示しており、2011年にはサミュエル・アドラー著の著名な管弦楽法教則本のフランス語版において、現代的な視点からの補筆を行ったことでも知られています。

作風と主要作品

アミの作品は、多様な様式や技法を取り入れながら、独自の音楽世界を構築しています。初期のブーレーズやシュトックハウゼンからの影響も見られますが、次第に豊かな音響と構成美を兼ね備えた独自のスタイルを確立しました。彼は声楽、様々な楽器のための作品、室内楽、オーケストラ作品、そしてオペラと、幅広いジャンルで多くの作品を生み出しました。

代表的な作品としては、初期の注目作である17楽器のための《躍動（Mouvements）》（1958年）、ソプラノと管弦楽のための大規模な作品《Strophe》（1965-67年）があります。指揮者、音楽監督としての活動期には、フランス放送新フィルハーモニー管弦楽団のために書かれた管弦楽のための《Adagio et stretto》（1978-80年）や、合唱とオーケストラのための力作《Missa cum jubilo》（1983年）などが挙げられます。後者は1988年に音楽評論家賞を受賞するなど高く評価されました。リヨン音楽院院長在任中には、大編成オーケストラのための《Orchestrahl》（1986-89年）といった意欲作を発表。晩年まで創作意欲は衰えず、日本のサントリーホールからの委嘱シリーズのために書かれた《チェロ協奏曲》（1999-2000年）や、A.ソルジェニーツィンの小説に基づく4幕のオペラ《最初の円》（1996-99年）といった大作を手掛けています。その他にも、ピアノのための《エピグラム集》、様々な編成の室内楽、独奏曲など、彼の作品リストは非常に豊富であり、その探求心と創造性の広がりを示しています。

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