スイ族

スイ族：中国南部の水辺に生きる人々

中国南部、貴州省や広西チワン族自治区、そしてベトナム北部にかけて居住するスイ族は、人口約40万人（2000年時点）の少数民族です。自らを「アイ・スイ」（水辺の人）と呼ぶ彼らは、タイ・カダイ語族に属するスイ語を話し、独自の文化を育んできました。

独自の文字と文化

スイ族は、漢字を逆さにしたような表意文字である「水書」を持っています。しかし、日常会話では使用頻度は低く、特別な知識を持つ「水書先生」と呼ばれる人々によって限定的に用いられています。水書の起源は、水書を発明したとされる伝説的な神にまつわる年中行事にも見られ、その神は「水書先生」の祭祀において中心的な役割を担っています。

歴史的には、百越系民族の駱越と混血した集団だと考えられています。漢族からは「水家」や「水家苗」と呼ばれ、古くから漢族をはじめとする周辺民族との交流が盛んに行われてきました。その結果、特に若い世代では中国語を話す者が増え、スイ語話者が減少している地域もあるとのことです。

水稲耕作と豊かな祭祀文化

貴州省の川沿いの地域に定住したスイ族は、水稲耕作を主な生業としてきました。彼らの文化には、先祖祭祀が重要な位置を占めています。10月から11月にかけて行われる端節（トゥワンチエ）では、真夜中に銅鼓に供物を捧げ、祖先の霊を慰めます。最近亡くなった人に対しては、遺影を掲げ、弔文や供物、故人の遺品を飾って供養が行われます。昼間は、若者による「賽馬」（競馬）や、男女の交流の場である歌垣が行われるなど、活気あふれる様子がうかがえます。

スイ族は、少数民族の中でも特に多くの銅鼓を保有していることでも知られています。また、大きな石や奇岩を神聖視し、子授けを祈る信仰も伝えられています。彼らの姓は、「廖」「潘」「呉」などが多く、かつては「蒙」を名乗る貴族による統治を受けていたようです。

スイ族の自治地域

中国政府は、スイ族の文化と権利を守るため、自治県や民族郷を設置しています。貴州省には三都スイ族自治県を筆頭に、複数の民族郷が存在し、スイ族の社会生活の中心となっています。

現代社会とスイ族

近年では、グローバル化や都市化の進展に伴い、伝統文化の維持が課題となっています。それでもスイ族は、独自の言語、文字、そして祭祀文化を守り続けようとしています。

まとめ

スイ族は、独自の文化と歴史を誇る少数民族です。水稲耕作と銅鼓、そして先祖祭祀といった伝統は、現代社会においても彼らのアイデンティティを支えています。中国南部に息づく彼らの文化は、今後とも注目に値するでしょう。

著名なスイ族出身者

周韋彤（Cica）：貴州省出身のファッションモデル。日本でも活動しています。
潘新簡：清末のスイ族蜂起の指導者。

もう一度検索