スウェーデン王立美術院

スウェーデン王立美術院：芸術の殿堂の歴史と変遷

スウェーデン王立美術院（Kungliga Akademien för de fria konsterna）は、スウェーデンの美術界において重要な役割を果たしてきた美術アカデミーです。その起源は1735年に遡り、当初は「王立アカデミー委員会（Kongliga Ritarakademien）」という名称の絵画学校として設立されました。1810年に現在の「Kungliga Akademien för de fria konsterna」に改称されました。

設立の背景と初期の活動

設立の背景には、ストックホルム宮殿の再建を監督したカール・グスタフ・テッシンの存在があります。彼は、芸術家人材の育成を目指し、絵画学校を設立しました。初期には、フランス人画家のギョーム・タラヴァルがモデルを使った指導を行い、ヨハン・パッシュらが最初の生徒として学びました。フランスの芸術アカデミーを手本とし、画家や美術愛好家が集まる場所として発展しました。

設立メンバーには、タラヴァル、テッシン、建築家のホーレマンらが名を連ねています。教師陣には、初期の生徒であったパッシュや、彫刻家のブーシャルド、肖像画家のシェッフェル、宮廷画家のアレニウスらが加わりました。

アカデミーの拡大と発展

1766年には議会の承認を受け、アカデミーは規模を拡大します。1768年には、建築家のアデルクランツが会議を招集し、名称を「王立絵画彫刻アカデミー（Kongliga Målar- och bildhuggarakademien）」に変更しました。校長には彫刻家のラルシュヴェックが、事務局長には版画家のFlodingが選出されました。また、王族が名誉会員に選ばれ、国内外の会員が選ばれるなど、組織としての体制が整えられました。グスタフ3世によって最初の規約が定められ、建築、作図法、解剖学、遠近法理論、文化史などが教育対象となりました。

18世紀後半には、彫刻家のセルゲルらが会員となり、デンマークの宮廷画家であったピロが1777年に校長に就任するなど、アカデミーは更なる発展を遂げました。

近代化と教育機関の分離

1832年には、ストックホルム美術協会が結成され、アカデミーの展覧会に新たな風を吹き込みました。1880年には、フランスで教育を受けた若い芸術家たちが「Opponenterna」という反アカデミーグループを結成し、美術界に新たな潮流を生み出しました。

当初から女性も会員に選ばれることが可能でしたが、女子学生が授業を受けるには許可が必要でした。1849年には、リンドグレーンら4人の女性画家が特別学生として授業を受け、1864年には女性のためのコースが開設され、多くの女子学生が教育を受けました。

1978年、美術学校は美術アカデミーから分離され、教育省の管轄下に移管されました。

著名な教師と学生

美術院では、ケーラーやクルマンなど、多くの著名な教師が教鞭を執りました。また、数多くの才能ある学生が巣立っていきました。彼らの活躍が、スウェーデンの美術界を豊かにしてきたと言えるでしょう。

スウェーデン王立美術院は、長年にわたりスウェーデンの美術教育と芸術活動の中心として、重要な役割を果たしてきました。その歴史と伝統は、現代の美術界にも深く根付いています。

参考文献
* Österberg, Carin et al., Svenska kvinnor: föregångare, nyskapare. Lund: Signum 1990. (ISBN 91-87896-03-6)

もう一度検索