スキャンイーグル

スキャンイーグル（ScanEagle）

概要

スキャンイーグルは、アメリカのボーイング・インシツ社によって開発された無人航空機（UAV）です。最初は民間向けの気象観測やマグロ漁船用の魚群探査機として作られましたが、その後軍事用途へと転用されました。機体デザインは無尾翼構造で、エンジンとプロペラは尾部に配置されており、ガソリンエンジンを利用しています。近年では、ジェット燃料にも対応したモデルも登場しています。

軽量のため、1人の士官が容易に携帯できるサイズで、主翼は脱着可能で専用コンテナに収納可能です。この可搬性が、様々な地域における運用を可能にしています。また、機首下面にはターレット（回転式センサー装置）が搭載され、電子光学センサーや中波長赤外線センサーを選択して任務にあったデータ収集が行えます。

独特なのは、降着装置を持たない点で、離陸は圧縮空気を用いたカタパルトシステムで行い、回収はスカイフックという特別な技術を使用します。スカイフックは、航空機の主翼端にフックを引っ掛ける仕組みで、広いスペースを必要としないため、航空母艦以外の艦船でも活用できます。

改良型

2014年10月には改良型のスキャンイーグル2が発表され、機首のセンサーターレットが大型化され、機体全体も大きくなったことでペイロード（搭載可能な重量）の増加や電力供給能力の強化が実現されています。しかし、航続時間は若干減少するという特徴もあります。

運用歴

アメリカ海兵隊は2004年にスキャンイーグルの運用を始め、次いでアメリカ海軍も導入しました。特に、アデン湾での海賊対処任務に役立てられています。この機体は、メーカーに運用を委託して軍がデータを購入する方式を採っているため、正式な機体番号は存在しません。さらに、2013年にはFAAから民間運用に必要な形式証明が交付され、石油流出監視や海洋監視などの用途でも利用されています。この低コストでインフラを必要としない特性により、多くの国々で陸海軍問わず採用されています。

イランは2012年にアメリカ海軍のスキャンイーグルを捕獲し、これを基にデッドコピーの「ヤシール」を製造、シリアやイラクで活動する民兵組織に供与したとの情報があります。

陸上自衛隊での運用

日本でも、陸上自衛隊が東日本大震災の教訓からスキャンイーグルを試験導入し、2019年から正式に運用を開始しました。陸上自衛隊は、スキャンイーグル2を「UAV（中域用）」という名称で契約し、監視や偵察活動を行っています。作戦基本部隊が作成した安全性と情報業務の支援を行います。

2024年現在、スキャンイーグルは複数の師団や情報隊に配備されています。具体的には、北部方面隊、東北方面隊、中部方面隊、西部方面隊などにそれぞれの部隊が存在し、教育支援を担当する情報学校も設けられています。運用においては、無人偵察機班が機体を操縦し、情報処理班が収集したデータの分析を行う体制が整っています。

諸元

• - 全長：1.55m（電子光学センサー装備時）
• - 全幅：3.11m
• - 自重：13.1kg
• - 最大離陸重量：22kg
• - エンジン：3W 2サイクル単気筒エンジン（1.5馬力）×1
• - 最大速度：148km/h
• - 上昇限度：5,944m（最大）/4,572m（常用）
• - 航続時間：24時間以上
• - ペイロード：3.4kg

登場作品

スキャンイーグルは映画『キャプテン・フィリップス』や『ザ・ラストシップ』などに登場し、特に海賊対処や情報収集の場面でその役割を果たしています。

参考文献

• - 『軍用ドローン年鑑』（2016年） イカロス出版

関連項目

• - 無人機
• - 無人航空機
• - RQ-21 ブラックジャック
• - ヤシール

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