スズキ・セルボ

スズキ・セルボ：40年近くに渡る軽自動車史を彩った個性派クーペの系譜

1977年から2011年まで、スズキは個性的な軽自動車「セルボ」を製造・販売していました。その歴史は、時代を反映したデザインとメカニズムの進化、そして販売戦略の変遷を辿る興味深い物語です。本稿では、各モデルの特徴や開発背景、販売状況、そしてCMに起用された著名人を含め、セルボの歴史を詳細に解説します。

1代目セルボ(SS20型、1977年-1982年)：女性をターゲットにしたスポーティなクーペ

初代セルボは、フロンテクーペの後継車種として登場しました。ジウジアーロデザインを受け継ぎつつ、ヘッドライトやミラーのデザイン変更、リアシートの拡大と可倒式化など、実用性を向上。水冷2ストローク3気筒エンジンを搭載したリアエンジン・リアドライブ方式を採用し、スポーティな走りを提供しました。グレードはCX-G、CX-L、CXの3種類で、CX-Lは女性をターゲットにした特別な仕様となっていました。しかし、発売後間もなく登場した初代アルトの人気の高まりもあり、販売面では苦戦を強いられました。ヨーロッパには1000ccエンジンを搭載した輸出モデルも存在しました。さらに興味深いのは、武蔵工業大学（現東京都市大学）の水素自動車研究にもセルボが用いられた点です。その研究車両は、スズキ歴史館で公開されています。

2代目セルボ(SS40型、1982年-1988年)：FF化とオートマチックトランスミッションの採用

2代目はフルモデルチェンジを行い、前輪駆動方式となり、初代アルトをベースに4ストロークエンジンを搭載しました。デザインは先代のスタイルを継承しつつ、2速オートマチックトランスミッションが設定されるなど、より女性ユーザーを意識したモデルへと進化を遂げました。1983年には電子制御式キャブレター搭載のターボモデルも追加、軽自動車初のドアミラーや12インチディスクブレーキも採用し、時代の最先端技術を取り込みました。CMには女優の浅丘ルリ子が起用され、話題を呼びました。

3代目セルボ(CG72V/CH72V型、1988年-1990年)：個性的なデザインと実用性の両立

3代目は4ナンバーのバンモデルのみの設定となり、初代からのクーペスタイルから、シューティングブレーク風の3ドアワゴンへと変貌を遂げました。特徴的な「ウェービールック」のルーフラインが印象的で、インテリアには西部劇の子供部屋をイメージした斬新なデザインが採用されました。また、収納スペースを多数確保するなど、実用性にも配慮した設計がなされています。高性能なエンジンと4WDシステムも用意され、女性バイクチーム「チームアンジェラ」によるサファリラリーでのクラス優勝という輝かしい実績も残しました。しかし、独特のデザインと短いモデルライフは販売台数に反映されず、わずか2年半で生産終了となりました。CMには、当時人気絶頂だった大西結花を起用しました。

4代目セルボモード(CN/CP21S型、1990年-1998年)：4気筒エンジン搭載のハッチバック

4代目セルボは「セルボモード」として生まれ変わり、従来のスペシャリティ路線から一転、オーソドックスなハッチバックスタイルを採用しました。軽自動車初の4気筒DOHCエンジンを搭載した高性能モデル「SR-Four」も設定されました。デザインは洗練され、アルトの高品質版として位置づけられました。ヨーロッパでは「アルト」の名で、インドでは「ゼン」の名で販売されました。CMでは織田裕二がイメージキャラクターを務めました。

5代目セルボ(HG21S型、2006年-2011年)：8年ぶりの復活と新たなデザイン

8年ぶりに復活した5代目は、5ドアハッチバックで、円弧をモチーフとした動感あふれるデザインが特徴でした。アルトの機構をベースにしながら、高いパッケージング性能を追求しました。上級グレードにはBluetoothハンズフリーシステムやキーレススタートシステムを搭載。高性能ターボモデル「SR」は直噴ターボエンジンと7速CVTを組み合わせ、優れた燃費性能と高出力を両立しました。CMキャラクターには佐田真由美が起用されました。

車名の由来

セルボの車名は、イタリア語で「牡鹿」を意味する「Cervo」に由来しています。

まとめ

セルボは、時代とともにデザインやメカニズムを進化させながら、常に個性と独自性を追求し続けてきました。その歴史は、軽自動車の進化と、時代の嗜好の変化を反映する貴重な記録と言えるでしょう。それぞれのモデルが持つ魅力と特徴を理解することで、セルボの歴史への理解がさらに深まるはずです。

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