スズキ・セレリオ

スズキ セレリオの歴史と進化

スズキ セレリオは、欧州市場を中心に展開されるAセグメントの小型乗用車です。初代モデルから現行の3代目モデルまで、その進化の過程を詳しく見ていきましょう。

初代（2008年 - 2014年）

2008年のパリモーターショーで発表された初代セレリオは、同年12月にインドで発売が開始されました。当初は地域によって異なる車名で販売され、ヨーロッパなど多くの地域では「アルト」、インドでは「Aスター」として知られていました。フィリピン、南アメリカ、北アフリカなど一部の地域では「セレリオ」の名称が使用されました。

また、日産自動車にはヨーロッパ市場向けに「日産・ピクソ」としてOEM供給も行われました。ピクソはアルト/セレリオとは異なるヘッドランプとフロントグリルが特徴です。

初代モデルの外観は、2008年1月のニューデリーオートエクスポに出展された「Aスターコンセプト」に基づいています。リアドアにはトヨタ・アイゴと同様に嵌め殺し窓が採用されていますが、一部モデルでは開閉可能なディビジョンバー付きの窓も存在しました。

エンジンは1.0L直列3気筒のK10B型が搭載され、5速MTまたは4速ATが組み合わされました。生産は主にマルチ・スズキ・インディアのマーネーサル工場で行われ、世界各地へ輸出されました。中国仕様車のみ、長安スズキで生産されました。

日本国内でも、メーカーのテスト目的でごく少数の欧州仕様右ハンドル車が輸入され、ディーラーに貸与された事例も確認されています。

2代目 FE42S型（2014年 - 2021年）

2代目モデルからは、車名がほぼ全世界で「セレリオ」に統一されました。ただし、パキスタンでは「カルタス」の名称が用いられました。2014年2月にニューデリーオートエクスポで発表され、インド国内での販売が開始されました。セレリオの投入に伴い、販売不振だった従来のAスターとエスティロは生産が終了しました。

スタイリングは、2013年11月のタイモーターエキスポに出展された「A:Wind」コンセプトに基づいています。エンジンはインド仕様車が従来と同じK10B型1.0L直列3気筒を搭載し、欧州仕様車にはデュアルジェットシステム搭載のK10C型が新たに用意されました。トランスミッションは、インド仕様車と欧州仕様車には5速MTに加え、新開発の「オートギヤシフト」（AGS）と呼ばれる5速AMTが搭載されました。マルチ・スズキではAGSを「EZ Drive」テクノロジーと呼んでいます。一方、タイ仕様車には5速MTと副変速機付CVTが用意されました。

インドでは発売開始から2週間で14,000台の受注があり、そのうち51%がオートギヤシフト車でした。生産はマルチ・スズキ・インディアのマーネーサル工場に加え、スズキ・モーター・タイランドでも行われました。

2015年6月3日には、インドでセレリオディーゼルが発売されました。搭載されたのはスズキ初の自社開発ディーゼルエンジンであるE08A型0.8L直列2気筒で、5速MTとの組み合わせで27.62km/Lの燃費性能を実現しました。また、2020年6月にはインドで天然ガス自動車「セレリオS-CNG」が発売され、デュアルECUとインテリジェント噴射システムにより、CNG1kgあたり30.47kmの燃費を達成しました。

3代目（2021年 - ）

2021年11月10日、インド市場でフルモデルチェンジが行われ、3代目モデルが発表されました。ヘッドライトとフロントグリルが一新され、内装は足回りの空間が拡げられ、スマートフォン接続可能な7インチのディスプレイオーディオが採用されました。軽量・高剛性のプラットフォーム「HEARTECT（ハーテクト）」が導入され、エンジンは1.0Lのデュアルジェットエンジンが搭載されました。トランスミッションは、2代目と同様に5MTとAGSが設定されました。生産は2代目と同じくマルチ・スズキ・インディアのマーネーサル工場で行われ、インドでの販売を皮切りに、中南米や中東、アフリカへの輸出も順次開始されました。

セレリオは、初代から3代目まで、各世代でそのデザインと技術を進化させてきました。小型車市場において、その存在感を高め続けています。

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