スズキ・バーディー

スズキ・バーディーシリーズ：街の鳥として愛されたビジネスバイク

スズキが1973年から製造・販売していたオートバイ「バーディー」シリーズは、その愛らしい名前の通り、街に溶け込む実用的なビジネスバイクとして親しまれてきました。本稿では、バーディーシリーズの歴史、各モデルの特徴、競合車種との比較、そして海外展開について詳細に解説します。

バーディー誕生とその背景

バーディーシリーズの起源は、1969年に発売されたスーパーフリーF50に遡ります。ホンダ・スーパーカブをライバル視したこのモデルは、アンダーボーンフレームやクランクケースリードバルブ式2ストロークエンジンなど、革新的な技術を採用していました。特に、フレーム剛性の高さはスーパーカブを凌駕し、走行安定性に優れていました。このスーパーフリーF50で培われた技術とデザインは、後のバーディーシリーズに受け継がれ、その基礎を築きました。

1973年、スーパーフリーの後継モデルとしてバーディーが登場します。名前の由来は「小鳥」で、街の生活に寄り添うバイクとして、親しみやすさを表現しています。主要な競合車種は、ホンダ・スーパーカブとヤマハ・メイトでした。これらのモデルと同様に、バーディーもアンダーボーンタイプのフレームを採用していました。

バーディーシリーズのモデル展開

バーディーシリーズは、排気量やエンジン形式によって様々なモデルが展開されました。主なモデルを以下に示します。

バーディー50

当初は2ストロークエンジンのみでしたが、1983年には4ストロークエンジン搭載モデルが追加され、両方が並行販売されるようになりました。2004年にはフルモデルチェンジを行い、4ストロークエンジンに統一されました。2ストロークモデルは「2サイクル・バーディー50」、4ストロークモデルは「4サイクル・バーディー50」として販売されていました。

特にFR50型は、スーパーフリーから受け継がれたフロントフォーク部へのポジションライトが特徴で、「行灯バーディー」と呼ばれていました。しかし、1998年の保安基準改正により、走行中はライトの消灯が禁止されたため、このポジションライトは廃止されました。

4ストロークバーディー50は、ホンダ・スーパーカブとの燃費競争が開発の背景にあります。1980年代初頭、2ストロークエンジンを搭載したバーディーは燃費・出力でスーパーカブを上回っていましたが、ホンダの新型エンジン投入により、状況が一変しました。この対抗策として、スズキは4ストロークエンジンの開発に着手し、4サイクルバーディーを投入したのです。

バーディー70・80

原付二種クラスでは、1975年に69ccのバーディー70（FR70型）が登場し、その後、79ccのバーディー80（FR80型）へと発展しました。これらも、50ccモデル同様、2ストロークエンジンを搭載し、様々なバリエーションが展開されました。

バーディー90

郵政省（現・日本郵政）向けの納入モデルをベースに開発されたバーディー90は、88ccの4ストロークエンジンを搭載し、14インチホイールを採用するなど、ビジネスバイクとしては画期的なモデルでした。日本国内専売車種であり、2008年に生産終了となりました。

RC50

1990年に登場したRC50は、2ストロークエンジンを搭載したモデルです。FR50型の上位機種として位置づけられ、テレスコピックフォークやJET-COOLED半強制空冷エンジンなどを採用していました。

エンジンと機構

バーディーシリーズのエンジンは、初期モデルでは水平配置の空冷単気筒2ストロークエンジンが中心でしたが、4ストロークモデルも登場しました。燃料供給はミクニ製キャブレター、動力伝達は3速ロータリートランスミッションと自動遠心クラッチの組み合わせでした。ブレーキは前後ともワイヤー式ドラムブレーキで、サスペンションは当初ボトムリンク式とツインショックでしたが、後にテレスコピックフォークに変更されました。郵政仕様車には、配達員の熱中症対策としてベージュ色のシートが採用されていました。

バーディーシリーズと競合車種

バーディーシリーズは、ホンダ・スーパーカブ、ヤマハ・メイトと激しい競争を繰り広げました。燃費、出力、耐久性など、様々な面で競合他社としのぎを削り、技術革新を促し合っていました。

海外展開

バーディーシリーズは、東南アジアなど海外市場でも販売されました。50cc、80ccに加え、100ccや110ccモデルも展開され、現地市場のニーズに対応していました。

まとめ

スズキ・バーディーシリーズは、長きに渡り日本の街角で活躍したビジネスバイクです。そのシンプルながらも実用的なデザイン、そして高い信頼性は、多くの人々に愛されてきました。時代の変化とともに進化を続けながらも、その基本コンセプトは常に「街に寄り添うバイク」であり続けました。このシリーズは、日本のモータリゼーションの歴史において、重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

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