スズキ・GSX-R/4

スズキ GSX-R/4：バイクを4輪にしたコンセプトカー

2001年、スズキは革新的なコンセプトカー「GSX-R/4」を発表しました。その名の通り、同社の代表的なスーパースポーツバイク「GSX-R」を四輪車として具現化した、他に類を見ない一台です。フランクフルトモーターショーと東京モーターショーで公開され、大きな話題を呼びました。

圧倒的なデザインとコンセプト

GSX-R/4のデザインは、スイフトやMRワゴンなどを手掛けたデザイナー、結城康和氏によるものです。アルミスペースフレームに樹脂パネルを組み合わせたボディは、バイクのサイドビューを彷彿とさせる独特のスタイル。メタリックレッドのフロント、むき出しのアルミフレーム、黒の樹脂パネルという大胆な色使いは、ヨシムラカラーのGSX-Rをイメージしたと、結城氏は語っています。

彼はデザインコンセプトについて、「ゲームのキャラクターのような、ポリゴンで表現されても存在感があるデザインを目指した」と説明しています。当時、日本のデザインといえば和紙や竹といった素材が注目されていましたが、結城氏は、欧米の若者世代にとって、ゲームやアニメの世界観の方が強い魅力を持つと考えていたのです。そのため、古典的なスポーツカーとは異なる、未来的なデザインを採用しました。

GSX-R/4は単なるコンセプトカーではなく、スズキの二輪のスポーティなイメージを四輪車へと展開していくというメッセージも込められていました。このコンセプトカーは、後に「CONCEPT-S」を経て、量産型となる2代目スイフトへとつながる重要な役割を果たしたのです。海外メディアでも、隼、GSX-R/4、CONCEPT-Sを並べたスズキの広告が数多く掲載されました。

走りに特化したメカニズム

GSX-R/4は、徹底的に走りに特化したスパルタンな設計です。フロントとリアには、プッシュロッド式ダブルウィッシュボーンサスペンションがむき出しで装着され、シート後部のロールバーや小ぶりなフロントウインドシールドスクリーンなども、オートバイを思わせるディテールです。全長3,550mm、全幅1,730mm、全高1,000mmというコンパクトなボディは、わずか645kgという軽量さを実現しています。

パワートレインには、当時世界最速のバイクとして名高い「隼」の1.3L直列4気筒エンジンをミッドシップに搭載。最高出力175PS/9,800rpm、最大トルク14.1kgm/7,000rpmという圧倒的なパワーを誇り、レッドゾーンは11,000rpmに設定されています。トランスミッションは6速シーケンシャルMTを採用。まさに、走ることに全てを捧げたようなメカニズムです。

未来的な「サーキット攻略ナビ」

GSX-R/4は、単なる速さだけでなく、新しい「走りの楽しさ」を提供するために、「サーキット攻略ナビ」という革新的なシステムを搭載していました。これは、カーナビゲーション機能に加え、車両セッティングの変更、レース中の自車位置やタイムの表示、そしてモンスター田嶋氏監修のサーキット攻略ガイドなどを提供。リアルなサーキット走行をゲーム感覚で楽しむことができました。

走行データのリプレイ機能や、リプレイデータに沿ってタイムアタックを行う機能もあり、レースゲームのような体験を現実のサーキットで実現。このシステムには、セイコーインスツル社が開発していた「Wrist Mount System」（後の「WRISTOMO」）のプロトタイプが用いられており、両社の技術コラボレーションが結実したものです。

グランツーリスモシリーズとのコラボレーション

GSX-R/4は、人気ゲーム「グランツーリスモ」シリーズにも登場しました。ゲーム内では、キャビン回りをトノカバーで覆った専用のモデルが採用され、内装は再現されているものの、計器類は機能していませんでした。2022年5月26日に配信された「グランツーリスモ7」のアップデートでは、「スズキ ビジョン グランツーリスモ」として、GSX-R/4の設計思想を受け継いだ最新技術を駆使したマシンが登場しています。

GSX-R/4は、その先進的なデザイン、圧倒的な性能、そして革新的なシステムによって、自動車史に名を残すコンセプトカーとなりました。単なる技術の粋を超えた、未来への挑戦の証と言えるでしょう。

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