スターリングラード級重巡洋艦

スターリングラード級重巡洋艦：幻のソ連大型巡洋艦

スターリングラード級重巡洋艦は、ソビエト連邦海軍が第二次世界大戦後の戦力増強計画の一環として開発を試みた大型巡洋艦です。ソ連海軍における正式名称は「82型巡洋艦」であり、その計画は1941年にまで遡ります。西側諸国では巡洋戦艦として分類されることもあります。

計画の始まり

1941年、ソ連海軍はキーロフ級やチャパエフ級といった軽巡洋艦と、クロンシュタット級重巡洋艦を整備する計画を並行して進めていました。しかし、海軍参謀本部はこれらの艦級の中間に位置する、より強力な巡洋艦の必要性を認識しました。当初の計画では、排水量2万トン級で203mm砲を搭載する艦とされていました。

1941年3月、ニコライ・クズネツォフ海軍人民委員はこの計画を承認しました。この時点での82型巡洋艦の設計は、ドイツ海軍から鹵獲し「ペトロパヴロフスク」と改名された未成重巡洋艦「リュッツオウ」（ソ連での呼称は83型重巡洋艦）の影響を強く受けていたと考えられています。当初の82型は、この83型の改良型として着手されました。1944年11月には、主砲を220mmに大口径化し、艦の規模も25,000トン級に拡大する計画が立てられました。しかし、当時のソ連は第二次世界大戦の真っ只中にあり、この計画を実行に移すことは困難でした。

戦後の計画変更

終戦後の1947年1月、ヨシフ・スターリン書記長は82型重巡洋艦に305mm砲を搭載するように指示し、同年8月には305mm砲搭載案2つと220mm砲搭載案1つが提出されました。1948年3月、スターリンは305mm砲搭載案を承認し、同年8月より第17中央設計局が具体的な設計を開始しました。この設計は、未完成に終わったクロンシュタット級重巡洋艦をベースにしているとされています。

1949年秋には原案が完成しましたが、スターリンは艦の速度が低いことを問題視し、再設計が命じられました。同年10月、スターリンは第16中央設計局を新設し、82型重巡洋艦の開発は同設計局に移管されました。当初、82型の任務は遊撃部隊の掩護、重巡洋艦との交戦、対地火力支援とされていましたが、スターリンはこれを修正し、交戦対象を軽巡洋艦に限定し速力を強化するよう求めました。また、両用砲を削減し対空機銃を増設、行動海域を黒海とバルト海に限定し航続距離を短縮するよう指示しました。

計画中止

新たな計画に基づいた設計は1951年6月に承認され、同年12月31日にネームシップが起工、翌年9月12日には2番艦が起工されました。しかし、建造は遅延し、さらに1953年3月にスターリンが死去。ソ連政府の最高指導者となったラヴレンチー・ベリヤは、砲熕兵器を主体とする従来型の戦闘艦は時代遅れであるとして、本級の計画を中止するよう命じました。当時進められていた4番艦の起工準備は中止され、2番艦と3番艦は建造途中で解体されました。ネームシップは、第16中央設計局の提案により標的艦に改造され、1957年までその任を務めた後解体されました。

スターリングラード級のスペック（計画値）

排水量：約36,000トン（満載）
全長：約273.6m
全幅：約32m
主砲：305mm三連装砲3基
副砲：130mm連装砲12基
対空砲：45mm連装機関砲24基、25mm連装機関砲40基
速力：約35ノット

結論

スターリングラード級重巡洋艦は、ソ連が第二次世界大戦後の海軍力増強を目指して計画した大型巡洋艦でしたが、スターリンの死と、その後のソ連の軍事戦略の転換によって、その実現を見ることはありませんでした。しかし、その計画は、後のソ連海軍の艦艇開発に少なからず影響を与えたと考えられています。

参考文献

アンドレイ V.ポルトフ「ソ連/ロシア巡洋艦建造史 第6回」『世界の艦船』第695号、海人社、2008年9月、106-111頁、NAID 40016164611。

関連項目

デモイン級重巡洋艦 - アメリカ海軍が建造した最後の水上砲戦用重巡洋艦。
チャパエフ級巡洋艦/スヴェルドロフ級巡洋艦 - 本級と並行して整備されていた軽巡洋艦。

外部リンク

* ロシア語）'>Проект 82

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