デモイン級重巡洋艦

デモイン級重巡洋艦：アメリカ海軍最後の重巡洋艦

デモイン級重巡洋艦は、アメリカ海軍が建造した最後の重巡洋艦であり、その艦級は水上戦闘を主眼とした第二次世界大戦型巡洋艦デザインの最高峰とされています。本級は、ボルチモア級/オレゴンシティ級重巡洋艦の拡大改良型として設計され、新型の8インチ速射砲を搭載したことが最大の特徴です。

概要

第二次世界大戦中、アメリカ海軍の巡洋艦は、駆逐艦との連携による雷撃支援や艦隊防護、長距離哨戒など、多岐にわたる任務を担っていました。太平洋戦域においては、高速空母任務部隊の護衛や地上部隊への砲撃など、水上戦闘艦としての役割も重要視されました。しかし、1942年の海戦で巡洋艦が多大な損害を受けたことから、日本海軍の巡洋艦に対抗できる火力を備えた艦の必要性が認識されました。この問題への解決策として、アメリカ海軍は日本海軍の巡洋艦をアウトレンジ可能なMk.16 55口径8インチ速射砲を搭載したデモイン級を建造しました。この砲は自動装填装置を備え、前級よりも大幅に発射速度が向上しています。

兵装

デモイン級の最大の特徴は、自動装填装置を備えたMk.16 55口径8インチ速射砲です。この砲は、1門あたり毎分10発という驚異的な発射速度を誇り、3連装砲塔3基、合計9門を装備しています。従来の8インチ砲が1門あたり毎分3-4発の発射速度であったことを考えると、その火力は圧倒的です。また、信管調定機構を備えており、どの仰角でも再装填が可能であったため、大口径砲でありながら限定的な対空射撃も可能でした。射撃管制には、FCR（Fire Control Radar）が採用され、より正確な射撃を可能にしました。しかし、これらの高性能化に伴い、砲塔重量は大幅に増加しています。

副砲としては、Mk.12 38口径5インチ両用砲を連装6基12門、対空火器としてはMk.27/Mk.33 50口径3インチ両用砲を連装12基24門、近接防御用として20mm機銃を連装12基24門を装備しました。これらの対空火器は、太平洋で展開する空母部隊を護衛するために重要な役割を担いました。

電子兵装には、Mk.13 FCRを装備したMk.54 GFCSや、Mk.25 FCRを装備したMk.37 GFCSなど、射撃管制用のレーダーが多数搭載されました。捜索用レーダーとしては、SG-6対水上レーダー、SK-3（後に撤去）、AN/SPS-6|AN_SPS-6C（後にAN/SPS-12へ換装）、AN/SPS-8A高角測距レーダーが搭載されました。

船体・機関

デモイン級は、全長約218メートル、満載排水量約21,000トンという巨体を誇り、当時建造された最大の重巡洋艦でした。船体が大型化したのは、新型三連装砲の搭載や防御力向上のためであり、全長・全幅を拡大した結果、重量増加に対応しました。機関出力は従来通り120,000軸馬力4軸推進でしたが、船殻の延長によって造波抵抗が減少したため、前級よりも排水量が約4,000トン増加したにもかかわらず、速力にはほとんど影響がありませんでした。

防御

舷側装甲は101.6mmから最大152.4mmの厚さを持ち、艦首と艦尾の防御区画は127mmの装甲を備えていました。水平装甲は88.9mmの主装甲に加え、その上部に25.4mmの弾片防御甲板を施していました。艦内部にはST鋼製の装甲隔壁や防火扉を備え、被害の拡大を防止する工夫が凝らされていました。司令塔部分の装甲は101.6mmから165.1mm、主砲塔には最大203.2mm、バーベットには160mmの装甲が施されており、防御力は非常に高いものでした。

航空兵装

航空燃料による火災の危険性を減少させるため、格納庫は艦尾に設置されていました。当初はカタパルトを2基装備する計画がありましたが、最終的には搭載されず、艦載ヘリコプターが導入されることになりました。1949年には、水上機に代わり艦載ヘリコプターが搭載されるようになり、後甲板は艦載艇用のスペースとして用いられるようになりました。

運用・評価

デモイン級は、水上戦闘を主任務とする伝統的な重巡洋艦として、優れた火力、速力、耐航性、防御力を発揮しました。第二次世界大戦型の戦闘においては、敵水上部隊から輸送船団や空母任務部隊を護衛するのに最適な艦級でした。しかし、ミサイルが主流となった戦後の海軍では、砲撃による艦隊戦を想定して建造された本級は、就役時には既に旧式化していました。とはいえ、その巨大な艦体と威容は艦隊の旗艦に最適であり、一番艦デモインは地中海に展開する第6艦隊旗艦を、二番艦セーラムは大西洋艦隊第2艦隊旗艦を務めました。また、三番艦ニューポート・ニューズも第2艦隊旗艦を務めました。

同型艦

デモイン (USS Des Moines, CA-134)
セーラム (USS Salem, CA-139)
* ニューポート・ニューズ (USS Newport News, CA-148)

デモイン級は、アメリカ海軍の重巡洋艦の歴史における最後の艦級として、その存在感を示しました。時代遅れになったという評価がある一方で、その優れた性能は、アメリカ海軍の技術力の高さを証明するものであったと言えるでしょう。

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