スチレン・ブタジエンゴム

スチレン・ブタジエンゴムとは

スチレン・ブタジエンゴム、通称SBR（Styrene-Butadiene Rubber）は、多くの合成ゴムの中でも一般的に使用されている素材です。この合成ゴムは、スチレンと1,3-ブタジエンという二つの主要成分の共重合体から作られます。特に自動車産業において、タイヤ製造などでその重要性が増しています。強度や耐摩耗性に優れ、品質が安定しているため、多くの製造業者にとって選択肢として好まれています。

特徴と物性的性質

スチレン・ブタジエンゴムの特筆すべき特性は、その耐熱性や耐摩耗性、耐老化性にあります。これらの性質により、高負荷がかかる環境下でもそのパフォーマンスを維持します。ですが、寒冷に対する耐性や引き裂き強度は他の汎用ゴムと比べると劣るため、用途に応じた選定が重要です。例えば、耐水性や耐アルコール性には優れていますが、強い酸化力を持つオゾンにはあまり強くないため、使用状況に応じた取り扱いが求められます。

製造プロセス

スチレン・ブタジエンゴムは、ラジカル重合という手法で、スチレンと1,3-ブタジエンを共重合することから始まります。この過程で加硫を施し、ゴムの弾性や強度を引き上げます。一般的には、スチレン含有率が23.5%のものが主流となっています。また、製造方法には乳化重合と溶液重合があり、乳化重合から得られるものはESBR、溶液重合から得られるものはSSBRと呼ばれます。SSBRはポリマー設計の自由度が高く、近年はさらに開発が進められています。

歴史的背景

この合成ゴムは、1930年代にドイツで初めて開発されました。当時は第一次世界大戦後のゴム需要の増加を背景に、従来の天然ゴムに代わる新しい素材としての研究が盛んに行われていました。そのため、イソプレンゴムの構造を参考にしながらスチレン・ブタジエンゴムが生まれ、「ブナS（Buna S）」という名称が付けられ、工業化が進められました。第二次世界大戦中に入ると、アメリカでは「合成ゴム計画」の下で軍需品向けに大量生産が行われるに至ります。戦後においては、自動車の普及とともにその需要が加速し、2013年には合成ゴム全体の約36%を占めるまでに成長しました。

用途範囲

スチレン・ブタジエンゴムは、自動車用タイヤのみならず、ホースや履物、防振ゴムといった様々な工業用途に広く利用されています。タイヤに関しては、他のゴムと混合して使用されることが一般的です。

S-SBRの特徴

S-SBR（Solution Styrene-Butadiene Rubber）は、その分子構造を精密に調整できる特性から、特に低燃費タイヤの素材として知られています。高い転がり抵抗とグリップ性能を実現するための研究が進められており、住友化学などの企業がシンガポールに製造プラントを持つなど、国際的にも注目されています。経済産業省によっても、高付加価値素材として位置づけられています。

結論

スチレン・ブタジエンゴムは、強力な耐久性と加工性を持つ合成ゴムとして、様々な産業において非常に重要な役割を果たしています。長い歴史を持ち、今後もその使用範囲は拡大していくと考えられます。

もう一度検索