スティーヴン・イッサーリス

スティーヴン・イッサーリス（Steven Isserlis CBE, 1958年12月19日 - ）は、イギリス出身のチェロ奏者として国際的に高い評価を受けています。彼の演奏の特徴は、その多岐にわたるレパートリーと、ガット弦を使用した独特の音色にあります。祖父ユリウス・イッセルリスも音楽家であり、その血筋を受け継いでいます。

初期の音楽教育とキャリア

イッサーリスはロンドンで生まれ、10歳からロンドンの国際チェロセンターでジェーン・コーワンに師事し、チェロの基礎を築きました。その後、1976年にはアメリカのオバーリン大学に留学し、研鑽を積みました。1977年にはロンドンでデビュー・リサイタルを開き、プロのチェロ奏者としてのキャリアをスタートさせました。

数々の受賞と音楽祭への参加

1993年、イッサーリスはアメリカでピアティゴルスキー芸術賞を受賞し、同年にはイギリスのロイヤル・フィルハーモニック協会から年間最優秀器楽演奏家賞を受賞するなど、その才能は早くから認められていました。1997年にはザルツブルク音楽祭に参加し、「メンデルスゾーンとその周辺」と題したシリーズで、メンデルスゾーンの室内楽を中心に据えたプログラムで高い評価を得ました。1998年には、音楽への貢献が認められ、大英帝国勲章を授与されています。

演奏活動と音楽祭のプロデュース

イッサーリスは協奏曲や室内楽の演奏に積極的に取り組み、長年忘れられてきた作品の復活にも力を注いでいます。また、コーンウォールでマスタークラスを主宰し、後進の指導にもあたっています。ジョシュア・ベルやタベア・ツィンマーマンなど、著名な音楽家との長年の協力関係のもと、数多くの音楽祭を組織しています。

楽器へのこだわりと録音

イッサーリスは、日本音楽財団より貸与されたストラディヴァリウス「フォイアーマン」を愛用しています。以前は1745年製のグァダニーニを使用していました。彼はガット弦の響きを重視し、協奏曲などで音量的に不利になってもスチール弦を用いないことで知られています。録音活動も活発で、BMGとの専属契約を経て、ハイペリオン、ヴァージン・クラシックス、BISなどの各レーベルから数多くのアルバムをリリースしています。2007年にはグラモフォン賞、2008年にはクラシカル・ブリット（批評家賞）を受賞しています。

著書による音楽の普及

イッサーリスは著述家としても知られています。子供向けの音楽家評伝エッセイ『もし大作曲家と友だちになれたら…』は、Amazon UK・児童書部門で一時『ハリー・ポッター』に次ぐランクを獲得するほどの人気を博しました。ティーンエイジャーから大人向けの続編『続・もし大作曲家と友だちになれたら…』も出版し、バッハ、モーツァルト、ベートーベンなど、様々な作曲家を紹介しています。また、シューマンの『若き音楽家への助言』を独自の視点で読み解いたガイド・エッセイ『音楽に本気なきみへ　イッサーリスと読むシューマンの助言』も執筆しています。

作曲家への深い理解とプロジェクト

イッサーリスは、自ら企画構成した室内楽シリーズやCD録音などを通して、作曲家の生涯や楽曲を深く掘り下げて紹介することで知られています。特にロベルト・シューマンについては深い造詣を持ち、2006年には日本で初のプロデュース公演〈スティーヴン・イッサーリス・プレゼンツ・シューマン・プロジェクト2006〉を企画構成しました。室内楽プロジェクトは、ロンドンのウィグモアホールやフランクフルト・アルテ・オパーなどで高い評価を得ています。

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