ステップ・バイ・ステップ交換機

ステップ・バイ・ステップ交換機（SxS）

ステップ・バイ・ステップ交換機（SxS）は、初期の自動電話交換システムで、発信者のダイヤル操作に直接連動して機械的に接続を確立する仕組みを持っていました。ダイヤルパルスによって制御されるソレノイドとラチェット機構が、ワイパー（可動接点）を動かし、段階的に二次、三次セレクターへと接続していくことで、特定の相手先電話への回線を繋ぎます。

対応電話機

この交換機に対応する電話機は、10pps（Pulse per second）のダイヤルパルス式です。具体的には、日本の3号、4号、600-A1、650-A1型などが挙げられます。一方で、クロスバー交換機以降に普及した20ppsの電話機や、プッシュ回線機能には対応していません。

発明

SxS交換機は、アメリカのアルモン・ブラウン・ストロージャーによって1887年から1891年にかけて開発されました。彼が設立したATM社によってA形が製造された一方、ドイツのジーメンス・ウント・ハルスケは1889年にH形を開発しました。ストロージャーは葬儀業を営んでいた際、電話交換手による妨害に遭ったことが、自動交換機開発のきっかけになったという逸話が残っています。

動作原理

A形自動交換機

発信者が受話器を上げると、まず「ラインスイッチ」が作動し、空いている一次セレクターに接続されます。ラインスイッチは加入者回線ごとに設けられ、最大200回線に対して25台のセレクターが対応します。回線使用頻度の低い地域では、「ラインファインダー」が使用され、複数の加入者が1台のセレクターを共有します。

セレクターの接点は10×10のグリッド状に配置されています。ダイヤルを回すと、パルス数に応じてワイパーが上方向に移動し、該当する番号のセレクターに接続。使用中の場合は、空きを探して横回転します。空きがない場合は話中音が鳴ります。番号の各桁に対応してセレクターがあり、1桁につき10回線まで同時に接続可能です。

最後の2桁のパルスは「コネクター」が受け持ちます。コネクターはセレクターと似ていますが、最初の1桁のパルスでワイパーが上下に動き、次の1桁で回転します。これにより、1台のコネクターで最大100回線に接続できます。着信側の発信回路は切り離され、受話器を上げても一次セレクターには接続されません。

通話が終わると、ワイパーは最初の位置に戻り、接続が切断されます。

H形自動交換機

H形のワイパーは、A形のように逆戻りするのではなく、最後まで前進して元の位置に戻る矩形運動を行います。これにより、接点の摩耗が均一化され、小型化にも貢献しました。ただし、A形とは電圧や伝送方式が異なるため、同じ局内で混在して使用されることはありませんでした。

日本での導入

日本では、1926年に京橋電話局がA形交換機を導入し、初の自動交換局が開局しました。関東大震災で電話基盤が壊滅したことが、自動交換機導入のきっかけとなりました。SxS方式は、当時としては震動に強い構造だったことが決め手の一つでした。

当初はA形とH形が並行して整備されましたが、後に国産化された際も、それぞれの改良品が併存しました。戦前には、2運動機構を加えた日本独自のT形（逓信省形）も考案されましたが、量産には至りませんでした。

クロスバー交換機への置き換え

SxS交換機は、ダイヤル自動化に貢献しましたが、中継回線選択機能の欠如、回線数の制限、設置面積の大きさ、機械駆動部の多さ、保守の煩雑さなどの欠点がありました。そのため、次第にクロスバー交換機に置き換えられることとなり、日本では1987年に最後の局が廃止されました。

制御方式

SxS交換機は、機械構造自体が制御機能を規定しており、特別な制御方式は持っていません。論理回路の概念が発見される以前に発明されたため、交換手不要の自動交換を実現できたことが、最大の特徴と言えるでしょう。

脚注

2 章 電話交換システム - 電子情報通信学会知識ベース (PDF)

関連項目

交換機
* 電話交換機

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