ステージ (デヴィッド・ボウイのアルバム)

ステージ

概要

『ステージ』（原題：Stage）は、英国を代表するロック・ミュージシャン、デヴィッド・ボウイが1978年に発表したキャリア通算2枚目の公式ライブ・アルバムです。この作品は、彼が同年に敢行した「アイソラーII・ツアー」における演奏を収録したものであり、同年9月29日にRCAレコードから世に送り出されました。

アイソラーII・ツアーは、前年にリリースされた実験的な傑作アルバム『ロウ』、そして同年発表の『ヒーローズ』という、いわゆる「ベルリン三部作」の中核をなす作品群を引っ提げて行われた大規模なワールドツアーです。このツアーでボウイは、当時の最新の音楽性を大胆に披露しつつ、過去のヒット曲も織り交ぜた圧巻のステージを展開しました。『ステージ』は、そのダイナミックなパフォーマンスの一端を捉えた貴重な記録となっています。

録音と収録曲

アルバムに収められた音源は、1978年4月下旬から5月初旬にかけて、アメリカ合衆国のフィラデルフィア、プロビデンス、ボストンといった都市での公演中に録音されました。

選曲の中心となっているのは、やはりツアーの核となった『ステイション・トゥ・ステイション』、『ロウ』、『ヒーローズ』といった作品からの楽曲です。特に「ベルリン三部作」からの楽曲が多くを占めており、当時のボウイの音楽的な方向性が色濃く反映されています。しかし、それだけでなく、初期の代表作である『ジギー・スターダスト』からも複数の楽曲が選ばれており、幅広いキャリアを網羅する構成となっています。オリジナルの1978年盤には17曲が収録されていましたが、その後の再リリースを重ねるごとに収録曲が増加し、最新の2017年版では22曲が収録されるに至っています。

反響とシングルカット

『ステージ』はリリースされると、商業的にも一定の成功を収めました。母国イギリスではアルバム・チャートで最高5位を記録し、英国レコード産業協会（BPI）からはゴールド認定を受けています。アメリカのチャートでは44位を記録しました。

このアルバムからは各国でシングルもカットされています。イギリスでは「壊れた鏡」（B面に「アートの時代」と「ジギー・スターダスト」を収録）、アメリカでは「スター」（B面に「ホワット・イン・ザ・ワールド」と「壊れた鏡」を収録）、そして日本では「魂の愛」（B面に「ブラックアウト」を収録）がそれぞれシングルとしてリリースされ、アルバムのプロモーションに貢献しました。

再リリースとその変遷

『ステージ』は、CD時代に入って以降、複数回にわたって再リリースされており、その度に収録曲や構成が変更されるという独特の歴史を持っています。

1984年盤（RCA）
最初のCD化盤です。オリジナルの1978年盤と同じ収録曲・曲順で、CD2枚組として発売されました。

1991年盤（Rykodisc）
ライコディスクからの再リリース。1978年盤と同じ曲順を基本としつつ、ボーナストラックとして「アラバマ・ソング」が追加収録されました。

2005年盤（EMI）
EMIからの再リリースでは、大幅な変更が加えられました。実際のコンサートのセットリストを反映させる形で収録曲順が見直され、さらに「ビー・マイ・ワイフ」「ステイ」の2曲が追加収録されました。また、音質面でも見直しが図られ、トラック間のフェードが取り除かれています。加えて、オーディオファン向けに、プロデューサーであるトニー・ヴィスコンティによる5.1サラウンドミックスを収録したDVD-Audio版も発売されました。

2017年盤（Parlophone）
ボウイのキャリアを網羅するボックス・セット『ア・ニュー・キャリア・イン・ア・ニュー・タウン (1977-1982)』に収録されたバージョンです。このボックスには、『ステージ』が2つのバージョンで収められました。1つは1978年のオリジナル盤の再現、もう1つは2005年盤と同様に実際のライブ曲順に基づいて再構成され、「ジーン・ジニー」「サフラジェット・シティ」の2曲が新たに追加収録されたバージョンです。後者のバージョンは、後に2枚組CDおよび3枚組LPとして2018年に単体でもリリースされています。

これらの再リリースを通して、『ステージ』は収録曲数が増え、ライブのセットリストにより近い形へと進化していきました。

参加ミュージシャン

このアイソラーII・ツアーのステージを共に作り上げた主要なミュージシャンは以下の通りです。

デヴィッド・ボウイ – ボーカル、チェンバリン
カルロス・アロマー – リズムギター、バッキング・ボーカル
ジョージ・マレー – ベース、バッキング・ボーカル
デニス・デイヴィス – ドラムス、パーカッション
エイドリアン・ブリュー – リードギター、バッキング・ボーカル
サイモン・ハウス – エレクトリック・ヴァイオリン
ショーン・メイズ – ピアノ、ストリングアンサンブル、バッキング・ボーカル
ロジャー・パウエル – キーボード、モーグ・ベース、シンセサイザー、バッキング・ボーカル

この強力なバンドメンバー、特にボウイ・バンドのリズム隊であるアロマー、マレー、デイヴィスに加え、新たにツアーに参加したエイドリアン・ブリューらの貢献が、当時のボウイの先進的なサウンドをライブで再現し、さらに発展させる上で重要な役割を果たしました。

『ステージ』は、デヴィッド・ボウイという変革者の、時代の最先端を走り続けた時期のライブパフォーマンスを捉えた、歴史的に重要な作品と言えるでしょう。

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