ステート・フェア・オブ・テキサス

テキサス州ダラスにある歴史的なフェア・パークを舞台に、毎年秋に盛大に開催される「ステート・フェア・オブ・テキサス（State Fair of Texas）」は、アメリカ有数の規模を誇る州立博覧会です。1886年にその歴史を開始して以来、第一次世界大戦や第二次世界大戦、そして2020年の新型コロナウイルス感染症の流行といった例外を除き、例年9月最終金曜日から24日間にわたって開催されています。入場者数は毎年200万人を超え、ダラスを代表する一大イベントとして、国内外から多くの人々を惹きつけています。

フェアの歴史と象徴

ステート・フェアの起源は1870年代にヒューストンで開催されていた博覧会に遡りますが、現在の形は1886年にダラスで民間組織によって始まったフェアが基盤となっています。経済的な困難を経てダラス市に運営が引き継がれ、秋の恒例行事としての地位を確立しました。戦争による中断はありましたが、それ以外はほぼ毎年開催が続けられています。

フェアのシンボルとして特に有名なのが、高さ約17メートル（55フィート）の巨大なカウボーイ像「ビッグ・テックス」です。1952年に初めて登場し、1953年には顎が動くようになり、来場者に向けて話しかける演出が加わりました。2012年に火災で焼失するものの、翌年には再建され、世界最大のカウボーイ像として親しまれています。また、1985年には一時北米最大だった高さ約65メートル（212フィート）の観覧車「テキサス・スター」が登場し、フェアのランドマークの一つとなっています。会場であるフェア・パーク内の「コットン・ボウル」スタジアムは、フットボールの試合会場としても歴史的に重要な役割を果たしてきました。

多彩なアトラクション

ステート・フェアは、老若男女が楽しめる多種多様なアトラクションを提供しています。伝統的な呼び物の一つは、フェア期間中にコットン・ボウルで開催されるカレッジフットボールの試合です。中でも、オクラホマ大学とテキサス大学オースティン校の長年のライバル対決である「レッド・リバー・ショウダウン」は特に高い人気を誇ります。他にも、グランブリング州立大学対プレイリー・ビュウA&M大学の「ステート・フェア・クラシック」など、複数のカレッジフットボールの試合が行われます。

また、1913年以降、アメリカで唯一、本格的なモーターショーをフェア内で開催していることも特徴です。しかし、フェア開催中のテナント立ち退き要求を巡り、かつてフェア・パーク内にあったテキサス自動車歴史博物館が撤退するといった問題も発生しています。

遊園地の乗り物はもちろん、様々なショーも開催されます。約500万ドルをかけて設置されたゴンドラ「テキサス・スカイウェイ」はフェア期間中のみ運行し、上空からの眺めを楽しめます。BMXのスタントショー、犬や豚のレース、子供向けのパペットショーや動物との触れ合い、読み聞かせなども人気を集めています。

名物グルメ：ユニークな揚げ物

近年のステート・フェアの代名詞ともいえるのが、斬新で高カロリーな「揚げ物」を中心としたユニークなグルメです。長年にわたり愛されているフレッチャー・ブランドのコーニー・ドッグは定番中の定番ですが、それ以外にも毎年「ベスト・テイスト」コンテストなどで新たな創作メニューが登場します。

過去には、オレオ、トゥインキー、チーズケーキ、バター、アボカドといった既成概念を覆す食材の揚げ物や、ワニ肉、ピーナッツバターとバナナとジャムのサンドイッチの揚げ物などが話題となりました。フライドコーク、チキン・フライド・ベーコン、揚げバナナ・スプリットなども出品され、その奇抜さで注目を集めています。ガールスカウトクッキーを揚げたものや、バッファローウィングのチミチャンガなども登場しており、フェアは「揚げ物文化」の一種の最先端となっています。

抱える課題と論争

輝かしい歴史と賑わいの陰で、ステート・フェアはいくつかの深刻な課題や論争も抱えてきました。特に歴史的な人種差別問題は根深く、かつてはアフリカ系アメリカ人の入場が特定の日にのみ許可され、レストランなど一部施設の利用も制限されるといった差別が存在しました。これは黒人コミュニティからの強い抗議活動を引き起こし、差別撤廃に向けた運動の舞台ともなりました。また、過去には「クー・クラックス・クランの日」といった、現代では考えられないような日も設定されていた歴史があります。

フェア開催が近隣地域の住民生活に与える影響も問題視されています。騒音や交通渋滞に加え、開催期間中の治安の悪化や終了後の地域の荒廃が、近隣住民の間で不満の種となっています。かつては、貧困層の黒人居住区を「見えなくする」ために、周辺の住宅地を買収して駐車場にしたといった経緯も指摘されており、地域との関係改善が課題となっています。

運営面でも、高額な役員報酬や、多額の投資を行ったアトラクション「サマー・アドベンチャーズ」が短期間で閉鎖されたこと、ジャーナリストや弁護士との間の訴訟問題などが批判を浴びています。フェアの経済効果についても、公式発表と独立した研究機関による数値に大きな乖離があることが指摘されており、その財務運営の透明性や地域への貢献度について、市民の間で継続的な関心が寄せられています。

様々な課題を抱えつつも、ステート・フェア・オブ・テキサスはダラスの秋を彩る欠かせないイベントであり、テキサスの文化やエンターテイメントを凝縮した特別な空間を提供し続けています。

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