ストレンジ・ブルー

ストレンジ・ブルー (Strange Brew)

「ストレンジ・ブルー」は、1967年に英国のロックトリオ、クリームによって発表された楽曲です。彼らのサイケデリックな要素を前面に出したセカンド・アルバム『カラフル・クリーム』（原題：Disraeli Gears）からの先行シングルとしてリリースされ、バンドの代表曲の一つとして知られています。

制作背景

楽曲の誕生は、1967年5月にニューヨークのアトランティック・スタジオで行われたセカンド・アルバムのレコーディング・セッションに遡ります。この時期、バンドは新たな音楽的方向性を模索しており、プロデューサーとしてフェリックス・パパラルディが迎えられました。セッション中、ギタリストのエリック・クラプトンは、自身が親しんでいたという1930年代の古いブルースナンバー「ロウディ・ママ（Lawdy Mama）」をスタジオに持ち込みました。この原曲を基に、クラプトン自身のリードボーカルで一度録音が行われました。

しかし、新たにプロデューサーとなったフェリックス・パパラルディは、録音された「ロウディ・ママ」を聴いた後、このトラックに新たな可能性を見出します。パパラルディは、作詞家のゲイル・コリンズに依頼し、「ロウディ・ママ」の歌詞を全面的に書き換えさせました。このようにして、原曲は全く異なるテーマと雰囲気を纏った「ストレンジ・ブルー」として生まれ変わったのです。楽曲の再構築後も、リードボーカルは変わらずエリック・クラプトンが担当し、彼の独特な歌声が新しい歌詞に乗せられることになりました。

リリースと成功

「ストレンジ・ブルー」は、レコーディングから間もなく、1967年6月9日にシングルレコードとして公式に発売されました。シングルのA面としてリリースされたこの曲のB面には、同時期のセッションで生まれた楽曲「英雄ユリシーズ」がカップリングされました。このシングルはすぐに注目を集め、商業的にも成功を収めます。特にイギリス国内で大きな反響を呼び、全英シングルチャートでは最高位17位を記録するヒットとなりました。

そして、「ストレンジ・ブルー」は、同年11月2日にリリースされたクリームのセカンド・アルバム『カラフル・クリーム』（原題：Disraeli Gears）に収録されました。アルバムはサイケデリック・ロックの名盤として高い評価を受け、「ストレンジ・ブルー」はその中でも特に印象的なオープニングトラックの一つとして、アルバムの方向性を決定づける重要な役割を果たしています。

演奏者

この楽曲のレコーディングに参加したクリームのメンバーは以下の通りです。

エリック・クラプトン: リード・ギター、リズム・ギター、リード・ボーカル
ジャック・ブルース: ベース、バッキング・ボーカル
* ジンジャー・ベイカー: ドラムス

クラプトンの流麗かつ粘り気のあるギタープレイ、ジャック・ブルースのメロディックで力強いベースライン、そしてジンジャー・ベイカーの複雑でパワフルなドラミングが一体となり、「ストレンジ・ブルー」独特のサウンドを生み出しています。特にクラプトンのボーカルは、この曲のシュールな歌詞世界に深みを与えています。

楽曲の意義

「ストレンジ・ブルー」は、クリームがブルースを基盤としつつも、新たな音楽的要素を取り入れ、独自のスタイルを確立していく過程を示す楽曲と言えます。古いブルース曲を、プロデューサーと作詞家の協力を得て再構築するという異例のプロセスを経て生まれたこの曲は、当時のロックシーンにおける創造性と実験性を象徴する一例です。シングルのヒットとアルバムへの収録によって、国内外の多くのリスナーにクリームの音楽性を強く印象づけました。発表から半世紀以上が経過した現在も、彼らのキャリアを語る上で欠かせない名曲として聴き継がれています。

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