ストロングビル

ストロングビルは、神奈川県横浜市中区山下町に、かつて存在した歴史的な建築物です。1937年（昭和12年）に、外国商館としてその姿を現しました。この建物は、2007年に惜しまれつつ解体されましたが、2009年にはほぼ同じ場所に建てられたホテルの低層部分に、その外観が復元されました。

ストロング商会の歴史

ストロングビルの歴史は、1871年（明治4年）にイギリスのG.ストラウス商会が日本に進出したことから始まります。同社は、横浜と神戸に支店を開設し、日本の貿易業界に足跡を残しました。大正時代に入ると、同社はストロング商会へと商号を変更しました。そして1937年、横浜公園に隣接する地に社屋を建設しました。第二次世界大戦後、1947年にはストロング商会は独立し、ストロング極東株式会社（Strong & Company (Far East) Ltd.）として新たなスタートを切りました。同社は、貿易商社として機械や繊維製品など、幅広い商品を扱い、その取扱品目は羽二重やクリスマス用飾り電球、箱根細工、さらにはグルタミン酸ナトリウムなど多岐にわたったとされています。

建築の特徴

ストロングビルの設計を手掛けたのは、横浜出身の建築家、矢部又吉です。彼は、ストロングビル以外にも、川崎銀行横浜支店（現在の損保ジャパン日本興亜横浜馬車道ビル）や第百銀行横浜支店（旧東京三菱銀行横浜中央支店）などの銀行建築も手掛けています。ストロングビルは、横浜公園の東側、大桟橋通りを挟んだ場所に位置しており、通りに面した正面の中央には、目を引くアーチ状の玄関ポーチがありました。建物の二階軒下や玄関ポーチの周りには、繊細な装飾が施され、その美しさを際立たせていました。ストロングビルは、横浜に残る数少ない戦前のオフィスビルの一つとして、その価値を認められていました。また、テレビドラマ『私立探偵 濱マイク』のロケ地としても使用され、多くの人々に親しまれました。後期には、1階の正面に向かって右側にコンビニエンスストアのam/pmがテナントとして入居し、市民生活にも密接に関わる存在でした。

建て替えと復元

2000年代に入ると、ストロングビルの建て替えが検討されるようになりました。2006年には、日本建築家協会から、その歴史的価値を考慮し、建物の保存を求める要望書が提出されました。横浜市都市整備局も、所有者であるストロング極東社に対し、建物の保全を要請しました。その結果、ストロング極東社は、横浜公園側の正面とその両側面について、外観の意匠を再現することを決定しました。また、玄関周りには既存の部材の一部を再利用するという形で、歴史的建造物の保存と再利用が図られました。2008年には、横浜市認定歴史的建造物に認定され、その歴史的価値が公に認められました。

そして2009年12月10日、ストロングビルの外観を復元した「ダイワロイネットホテル横浜公園」が開業しました。このホテルは、1階から3階にストロングビルの外観を再現し、1・2階にはコンビニエンスストアやレストランなどのテナントが入り、3階にはホテルのロビーが設けられました。4階から12階は客室となり、全292室、591人の宿泊者を収容することが可能です。最上階の13階には、結婚式場が設けられ、新たな利用が開始されました。

このように、ストロングビルは、その歴史と建築的な特徴を大切にしながら、新たな形で現代に蘇った建築物として、その価値を伝えています。

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