旧東京三菱銀行横浜中央支店

旧東京三菱銀行横浜中央支店は、神奈川県横浜市中区に位置し、1934年に竣工した銀行建築です。この建物は、かつて横浜の経済を支えた銀行の歴史を今に伝える貴重な遺産であり、その建築様式は多くの人々を魅了しています。

歴史

この場所には、かつて第百国立銀行の横浜支店がありました。第百国立銀行は1878年に創業し、1890年に横浜支店を南仲通5丁目に開設しました。その後、1905年に現在の場所に移転しています。1927年には、第百銀行が川崎銀行と合併し、川崎第百銀行となりました。そして、1934年5月にこの建物が完成したのです。

川崎第百銀行は、1936年11月に第百銀行と改称し、1943年4月には三菱銀行に吸収合併され、三菱銀行横浜支店となりました。その後、1996年に三菱銀行と東京銀行が統合し、東京三菱銀行横浜中央支店となりました。2003年度には、横浜市認定歴史的建造物に認定され、その文化的価値が認められました。しかし、店舗の統廃合のため、この建物はマンション業者に売却されることになりました。

この売却に対し、日本建築学会などの団体から、貴重な歴史建築の保存を求める声が上がりました。その結果、マンション建設にあたっては、低層部にファサードを復元するという形で保存されることになりました。

2004年には、1階と2階にこの銀行建築のファサードを残した、地上21階建て、総戸数135戸の分譲マンション「D'グラフォート横浜クルージングタワー」が完成しました。これにより、歴史的な建築物と現代的なマンションが融合した新たなランドマークとして生まれ変わりました。

建築

旧東京三菱銀行横浜中央支店は、本町通りと関内大通りが交わる、関内地区の主要な交差点である本町3丁目交差点の角に位置しています。この建物の設計を担当したのは、横浜出身の建築家、矢部又吉です。彼は、川崎銀行の建築を多く手掛けたことで知られています。

この建物の特徴は、イオニア式の大オーダーを持つことです。ピラスター頂部やコーニス下端には、クラシックな装飾帯が施されており、その優雅なデザインは、当時の銀行建築の特徴をよく表しています。ファサードの一部が保存されたことで、この美しい建築様式は現在でも見ることができ、横浜の歴史と文化を今に伝えています。

この建物は、横浜の歴史と建築の変遷を物語る重要な存在であり、今後もその価値を大切に保存していく必要があります。

参考文献

[横浜市]]都市整備局都市デザイン室『都市の記憶―横浜の近代[[建築]復刻版』2017年9月、34頁。
“東京三菱銀行横浜中央支店ビルの保存に関する要望書”. 日本建築学会 (1998年5月18日).

関連項目

損保ジャパン横浜馬車道ビル - 旧川崎銀行横浜支店。矢部又吉による設計で、解体が検討されたがファサードが保存された。
三井住友銀行横浜支店 - 本町通り沿いにある、1931年竣工の現役の銀行店舗。本建築と同様、イオニア式の円柱を持つ。

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