ストローブマツ

ストローブマツ（ホワイトパイン）

ストローブマツ（学名: Pinus strobus）は、マツ科マツ属の常緑針葉樹です。北米大陸東部を原産とし、その美しい樹姿と有用な木材から、世界中で広く植栽されています。特に、木材の色が白いことから「ホワイトパイン」という名で親しまれています。

ストローブマツの特徴

形態:
樹高は45メートル以上にも達し、ピラミッド型の美しい樹形を形成します。
葉は五葉松の一種で、5本の針葉が束になって生えています。
葉の色は青みがかった緑色で、柔らかいのが特徴です。
松かさは細長く、赤茶色をしています。
生態:
寿命は長く、200〜400年以上生きる個体も存在します。
幼木は日陰に弱いため、成木になるには競争に打ち勝つ必要があります。
土壌中の窒素を効率的に吸収し、他の植物の生育を阻害する性質があります。
風媒花であり、大量の花粉を風に乗せて散布します。
火災にある程度の耐性があります。

ストローブマツの分布と生育環境

ストローブマツは、北米大陸東部、具体的にはカナダ東部からアメリカ合衆国東部にかけて広く分布しています。日本では、北海道を中心に植林されています。水はけの良い冷涼な気候を好みますが、適応力が高く、様々な環境で生育することができます。

人間との関わり

ストローブマツは、その材質の良さから、古くから木材として利用されてきました。

木材利用:
軽くて加工しやすく、狂いが少ないため、建築材、家具材、建具材として重宝されています。
かつては、帆船のマストとして利用されていました。
その他:
クリスマスツリーとしても利用されています。
葉にはビタミンCが豊富に含まれており、食用や薬用にも利用されています。
アメリカ先住民は、ストローブマツを様々な用途に利用してきました。

病害虫

ストローブマツは、ゾウムシによる食害や菌類による病害に侵されることがあります。特に、五葉松類発疹さび病は、ストローブマツに大きな被害をもたらすことで知られています。

五葉松類発疹さび病とその対策

五葉松類発疹さび病は、北米原産の五葉松に壊滅的な被害をもたらした樹木の病気です。この病気の原因はサビキンと呼ばれる菌類で、葉や枝に発疹のようなものができます。20世紀初頭には、感染による大量死が50〜80％に達しました。この菌はマツとスグリ属の植物を交互に宿主とするため、スグリ属の植物の除去が対策として行われ、被害は減少しました。現在では抵抗性品種の開発も進められています。

保全状況

ストローブマツは、IUCN（国際自然保護連合）のレッドリストでLEAST CONCERN（軽度懸念）に分類されています。生育範囲が広く、個体数も安定しているため、絶滅の危機に瀕しているわけではありません。

ストローブマツとアメリカの歴史

ストローブマツは、アメリカの歴史とも深く関わっています。イギリス植民地時代には、イギリス海軍がマストの材料としてストローブマツを独占しようとしたため、アメリカの植民地の人々の反感を買いました。ストローブマツの伐採禁止は、アメリカ独立戦争のきっかけの一つになったとも言われています。

ストローブマツは、アメリカの自由と独立の象徴として、現在でも大切にされています。

参考文献

ジョナサン・ドローリ 著、三枝小夜子 訳『世界の樹木をめぐる80の物語』柏書房、2019年12月1日。ISBN 978-4-7601-5190-5。
平野隆久写真、片桐啓子文『探して楽しむドングリと松ぼっくり』山と溪谷社〈森の休日〉、2001年、52頁。ISBN 4-635-06321-6。

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