スバル・STI E-RA

スバル・STI E-RA: 電気ドライブトレインによる挑戦

スバル・STI E-RAは、次世代の電動レースカーであり、二次電池を使用した電気駆動システムを搭載しています。この車両は、スバルのモータースポーツ部門であるスバルテクニカインターナショナル（STI）によって開発されており、正式名称は「E-RA」といいます。この名称は「Electric—Record Attempt」（電気、記録への挑戦）を意味し、モータースポーツの新たな時代を象徴しています。コンセプトカーの初披露は2022年1月14日に東京オートサロンで行われました。

設計背景

STI E-RAは、2020年から開発が進められています。これは、STIが取り組む「STI E-RA CHALLENGE」プロジェクトの一環として、将来的にレースシーンに投入されることを目指したプロトタイプです。特に注目すべきは、2023年に予定されているニュルブルクリンクの北コースでの400秒ラップタイム記録挑戦です。現在の電気自動車の記録は、2019年にフォルクスワーゲン・ID.Rが達成した365.3秒で、過去の記録としてはNIO・EP9が2017年に記録した405.9秒があります。

この記録挑戦は、日本国内のテストトラックでの走行試験を通じて準備が進められています。また、STI E-RAは2023年に始まるFIAエレクトリックGT選手権の規定に沿って開発されており、将来的には競技車両としての役割も果たす予定です。

STIの活動は1989年に始まり、その当時のスバル・レガシィ・セダンを使用して特別なプロジェクトが推進されました。このプロジェクトはスピードと耐久性の記録樹立に貢献し、記念すべき市販モデル「レガシィRS Type RA」が1992年に登場しました。以来、STIは「RA」の名を最高性能モデルに冠してきました。

ドライブトレインと性能

STI E-RAのコンセプトは全輪駆動（AWD）で、各ホイールに個別のモーターを配置することでトルクベクタリングが可能です。この設計により、運転中のパフォーマンスを最適化し、走行安定性を高めています。最高出力は800 kW（約1,073 hp）、最大トルクは1,100 N·m（約810 lbf·ft）に達することが発表されています。各モーターの出力は200 kW（約268 hp）です。また、ヤマハ発動機がこの駆動用モーターを開発・供給しています。

車両は60 kWhのリチウムイオン二次電池を搭載しており、FIAエレクトリックGT選手権では、レース中に一度はピットストップで充電する必要があります。このため、比較的小さな電池容量となっていると見られています。FIAのルールにより、総出力は430 kW（約577 hp）に制限される可能性があり、将来的には公道走行仕様のホモロゲーション型も生産される見込みです。

シャシー設計

STI E-RAのシャシーは炭素繊維強化プラスチック製のモノコックで、これは日本のSUPER GTのGT300クラスでの経験を活かした結果です。車体には冷却用の大型ルーフマウントスクープや、ダウンフォースを増加させるためのウイングが多数取り付けられています。ブレーキシステムは、ブレンボ社のAP Racing部門によって提供されています。

エレクトリックカーの分野では、STI E-RAは重要なステップとなるでしょう。電気自動車がモータースポーツにも参入し、高いパフォーマンスを発揮する姿勢は、今後の自動車市場に大きな影響を与えると考えられています。

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