スパー石

スパー石：高温スカルン鉱床の珍しい鉱物

スパー石（Spurrite）は、高温スカルン鉱床と呼ばれる特殊な地質環境で形成される、珍しい珪酸塩鉱物です。通常のスカルン鉱床よりも高温の条件下で、石灰岩と火成岩が反応することで生成されます。

1908年、メキシコ・ドゥランゴ州のTerneras鉱山で初めて発見され、アメリカの著名な地質学者Josiah Edward Spurr（1870-1950）の名にちなんで命名されました。

スパー石は炭酸塩の一種でもあるため、塩酸などの酸に接触すると発泡するという特徴があります。しかし、この性質は他の鉱物、例えばティレー石などとも共通するため、スパー石の同定には注意が必要です。通常は白色から無色で、塊状の集合体として産出することが多く、結晶はあまり見られません。

日本の産地と多様な鉱物

岡山県備中町布賀と広島県東城町久代周辺地域は、高温スカルン鉱床として世界的に知られています。この地域では、紫色や青色のスパー石をはじめ、五水灰硼石などの珍しい鉱物や、逸見石、大江石、岡山石、布賀石、備中石、森本柘榴石など、多くの新鉱物が発見されています。これらの鉱物の多様性は、この地域の地質学的特殊性を示す重要な証拠となっています。

世界的な分布と生成メカニズム

スパー石は日本以外にも、アメリカ合衆国（カリフォルニア州、ニューメキシコ州、モンタナ州）、アイルランド、スコットランド、ニュージーランド、トルコ、イスラエル、シベリアなど、世界各地で産出が確認されています。

特にイスラエルのネゲヴ砂漠で産出するスパー石は、興味深い生成メカニズムを持っています。当初、この地域には高温スカルン鉱床の痕跡が見当たらず、その生成過程は謎に包まれていました。しかし、最近の研究では、地層中に含まれる瀝青（れきせい）の酸化による熱が、スパー石の生成に重要な役割を果たしたと考えられています。瀝青の酸化は、地熱や他の地質学的プロセスによって引き起こされた可能性があります。

まとめ

スパー石は、その希少性と特殊な生成環境、そして多様な産出地域から、鉱物学者や地質学者にとって非常に重要な研究対象となっています。特に、日本での産出は、世界的に見ても重要な発見であり、今後もさらなる研究が期待されています。スパー石の研究は、高温スカルン鉱床の成因や、鉱物の生成メカニズムの解明に大きく貢献する可能性を秘めています。 また、各産地の地質学的特徴を比較することで、スパー石の生成条件や、関連鉱物との共生関係についての理解が深まると期待されます。

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