逸見石

逸見石：日本の秘宝、その神秘的な魅力

逸見石（へんみいし、henmilite）は、岡山県高梁市布賀鉱山の地層から発見された、日本が世界に誇る希少な鉱物です。ホウ酸塩鉱物の一種に分類され、その化学組成式はCa₂Cu(OH)₄B₂(OH)₈と表されます。三斜晶系という結晶構造を持つこの鉱物は、主に藍色から紫色を帯び、ガラスのような光沢が特徴です。通常は小さな結晶として産出され、その硬度は2と比較的柔らかです。

誕生秘話と命名の由来

1986年、化学者の中井泉氏らの研究チームによって新鉱物として発表された逸見石。その名前は、岡山大学に貢献した鉱物学者、逸見吉之助氏と逸見千代子氏に由来しています。発見された当時から、その鮮やかな色合いと希少性から、鉱物愛好家の間で大きな話題を呼びました。日本産新[[鉱物]]の中でも、とりわけ美しいと称賛されています。

最新研究：磁性の謎

近年、東京工業大学や東北大学などの研究グループによる更なる研究で、逸見石が特異な磁気的性質を持つことが明らかになりました。この発見は、鉱物学のみならず、物理学分野にも大きな衝撃を与えました。その詳細はまだ解明されていない部分も多いですが、この奇妙な磁気的挙動は、逸見石の原子レベルでの構造や電子状態に起因すると考えられています。この研究は、新たな物質科学の扉を開く可能性を秘めています。

希少性と産出地

逸見石は、発見された布賀鉱山以外では確認されておらず、極めて狭い地域にのみ産出する、非常に珍しい鉱物です。その産出量も少なく、市場に出回る数はごくわずかです。そのため、逸見石はコレクターの間では非常に高値で取引され、まさに日本の秘宝と言えるでしょう。

科学的価値と文化的意義

逸見石は、その希少性や美しい外見だけでなく、科学的にも重要な鉱物です。その特異な結晶構造や磁気的性質は、物質科学や地球科学の研究において重要な知見を提供すると期待されています。さらに、日本の地質学の歴史、そして鉱物学研究の進歩を象徴する鉱物としても、大きな文化的意義を持っています。

参考文献

Izumi Nakai; Hisashi Okada, Kazunosuke Masutomi, Eiji Koyama, and Kozo Nagashima (1986). “Henmilite, Ca2Cu(OH)4[B(OH)42, a new mineral from Fuka, Okayama Prefecture, Japan”. American Mineralogist 71: 1234-1239.
草地功「逸見石の鉱物学的性質」『鉱物学雜誌』第21巻第3号、日本鉱物学会、1992年、127-130頁。
松原聰、宮脇律郎『日本産鉱物型録』東海大学出版会、2006年。

関連事項

鉱物
ホウ酸塩鉱物
スカルン鉱物
日本産新[[鉱物]]
布賀鉱山

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