スペクトラムアナライザ

スペクトラムアナライザとは

スペクトラムアナライザは、電気信号の周波数成分を分析し、その強度をグラフで表示する計測器です。横軸に周波数、縦軸に電力または電圧をとり、信号の周波数特性を可視化します。この機器は、無線通信、電子機器、オーディオなどの分野で、信号の分析や機器の評価に不可欠です。略称として「スペアナ」と呼ばれることもあります。

高周波用スペクトラムアナライザ

高周波用のスペクトラムアナライザは、主に無線通信の分野で使用されます。無線機の開発、保守、修理において、送信波やスプリアス（不要な電波）の観測、受信機のローカル信号の分析に利用されます。また、電波の強度測定やEMC（電磁両立性）試験におけるノイズレベルの測定、トラッキングジェネレータと組み合わせてネットワークアナライザとしても使用されます。

使用方法

一般的なスペクトラムアナライザは、入力端子（通常はN型コネクタ）と校正信号出力端子を備えた四角い箱型です。測定には、まず入力端子のインピーダンス（通常は50Ωまたは75Ω）を合わせ、縦軸の目盛り（DIV）と横軸の掃引周波数範囲（SPAN）を設定します。測定範囲は、最低周波数から最高周波数まで連続的に掃引されます。中心[[周波数]]やスパン、REFレベル、アッテネータなどを調整し、適切な測定を行います。RBW（分解能帯域幅）の設定も重要で、不適切な設定は誤った測定結果につながります。

動作原理

多くの高周波用スペクトラムアナライザはヘテロダイン方式を採用しています。これはラジオのチューニングと似ており、周波数を掃引して各周波数成分を検出します。近年では、ダイレクトコンバージョン方式や、ソフトウェア無線技術を用いたものも登場しています。

価格とメーカー

価格は、10万円台の安価なものから1000万円以上の高価なものまで幅広く存在します。また、自作キットも販売されています。

主なメーカーとしては、キーサイト・テクノロジー、アドバンテスト、アンリツ、ローデ・シュワルツ、テクトロニクスなどが挙げられます。特にテクトロニクスは、高速フーリエ変換（FFT）を用いた掃引しない方式の製品も提供しています。

低周波用スペクトラムアナライザ

低周波用のスペクトラムアナライザは、主に低周波信号の周波数特性測定や騒音測定に用いられます。オクターブバンドで分割されたバンドパスフィルターの集合体で構成されることが多く、近年ではAD変換とFFTを用いたものが主流になりつつあります。FFTアナライザと呼ばれることもあります。

オクターブバンド

オクターブバンドは、IEC 61260によって規格化されており、1octまたは1/3octのものが一般的です。1/3oct分割の場合、27〜33バンド程度で表示されます。測定では、リアルタイム表示と加算平均表示を切り替えられ、機種によっては測定結果の記録や外部出力も可能です。

価格とメーカー

簡易なものでは数万円から、校正済みのマイクロフォンとセットになったものでは十数万円から市販されています。多機能オーディオアナライザとして搭載されている高機能なものは数百万円程度になります。

主なメーカーとしては、小野測器、リオン、B&K、Goldline、Ivie、NTI、Terrasondeなどがあります。ここでは専用機を発売しているメーカーを列挙し、PCソフトウェアは除外しました。

オーディオ機器用スペクトラムアナライザ

1980～90年代のラジオカセットレコーダーやミニコンポ、カーオーディオには、スペクトラムアナライザが搭載されていることがありました。コンポーネントステレオ用としても販売され、グラフィックイコライザーと一体になった製品もあります。また、拡声機器にも使われています。

Windows Media PlayerやニンテンドーDSiサウンドにも、音声ファイルの再生時にスペクトラムアナライザの機能が視覚エフェクトとして搭載されています。これらは特定の周波数ごとの棒グラフ表示が多く、音源の周波数特性を管理したり、グラフィックイコライザーの調整結果を確認するために使われます。

ただし、これらの多くは装飾的な意味合いが強く、測定用のものと比較して表示が粗い、または単なる演出であることが多いです。測定用の低周波スペクトラムアナライザを代用することも可能ですが、入力端子の形状、出力端子の有無、ステレオ対応、設定の複雑さ、価格などの点で課題があります。

関連技術

高速フーリエ変換（FFT）: デジタル式スペクトラムアナライザに用いられるアルゴリズムです。低周波用では主流になりつつあります。
ソフトウェア無線: スペクトラムアナライザの機能を備える機種が増加傾向にあります。

参考文献

Robert A. Witte 著、竹田輝夫、荒井信隆 訳『スペクトラム/ネットワーク・アナライザ: 理論と計測』トッパン、1993年。

外部リンク

Spectrum analyzer tutorial
30 years of FFT Analyzers
FFT Basics and Case Study
Multi-page spectrum analyzer tutorial
Tektronix RSA6100A

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