スペースX CRS-20
スペースX CRS-20、またはSpx-20とも称されるこのミッションは、2020年3月7日に国際宇宙ステーション（ISS）へ向けて打ち上げられました。これはNASAからの委託を受け、スペースXが実行した商業補給サービス（CRS）の一環です。特に重要な点として、本ミッションはスペースXがISSへの物資輸送に使用してきた初期型宇宙船「ドラゴン1」にとって、最後のフライトとなりました。また、NASAとの最初の商業補給サービス契約（CRS-1）に基づく一連のミッションを締めくくるものでもあります。CRS-1契約全体を通じて、スペースXは累計43,000キログラム以上の貨物をISSに運び込み、同時に33,000キログラム以上の不要品や科学サンプルを地球へ持ち帰るという実績を上げました。
CRS-20ミッションに投入されたドラゴンカプセル（機体番号C112）は、過去にもCRS-10およびCRS-16ミッションでISSへの飛行経験を持つ再利用機でした。打ち上げに使用されたファルコン9ロケットの第1段ブースター（機体番号B1059）も、先行するCRS-19ミッションで既に一度使用されたものです。
ドラゴンカプセルは打ち上げから2日後の2020年3月9日、協定世界時10時25分にISSへ到着しました。ドッキングポートへ固定するため、ISSのロボットアーム「カナダアーム2」がカプセルを捕捉しました。これは、カナダアームがドラゴン1を捕捉する最後の機会となりました。なぜなら、ドラゴン1の後継機である「カーゴドラゴン2」宇宙船は、ステーションに直接ドッキングする方式を採用しているからです。
このミッションは、当初の計画よりも遅れて実施されました。2016年2月には、NASAがスペースXとの間でCRS-1契約に基づき、CRS-16からCRS-20までの5回の追加ミッションを実施することで合意したと発表されました。その後、2016年6月のNASA監察官の報告書では、CRS-20は2019年の実施を予定していると記載されていましたが、2019年6月には打ち上げが2020年3月へ延期される見込みとなりました。
CRS-20ミッションでISSへ輸送された貨物の総重量は1,977キログラムに及びました。積荷の内訳は以下の通りです。
科学調査関連機材：960 kg
ステーションの船体ハードウェア：219 kg
乗組員の補給品：273 kg
船外活動（EVA）用装備：56 kg
コンピューター関連資材：1 kg
非与圧貨物（外部設置用）：バルトロメオ・プラットフォーム 468 kg
主要な積荷の詳細を見てみましょう。
科学調査
積荷の約半分を占める科学調査関連機材には、微小重力環境が幹細胞の挙動、腸疾患の進行、あるいは化学反応の効率などにどのような影響を与えるかを研究するための様々な実験装置やサンプルが含まれていました。
バルトロメオ・プラットフォーム
非与圧貨物として運ばれたバルトロメオは、ISSのコロンバスモジュールの外部に設置される多目的プラットフォームです。探検家クリストファー・コロンブスの弟にちなんで名付けられ、エアバス・ディフェンス・アンド・スペースが開発し、欧州宇宙機関（ESA）が運用を担当します。これはISSに設置された初の商用外部研究プラットフォームであり、最大12個のペイロード（実験装置など）を搭載可能で、電力供給やデータ伝送機能を提供します。バルトロメオはドラゴンのトランク部に搭載されており、2020年4月2日にISSのロボットアームによって取り出され、コロンバスモジュールの外側へ設置されました。その後、プラットフォームの機能を有効化するための電力線や通信線を接続するための船外活動が必要でしたが、ISSの乗員体制の都合から延期され、実際にステーションの乗員が最小定員の6名体制となったのは2020年8月以降でした。この施設の運用が始まると、コロンバスモジュールは、様々な材料科学、地球観測、宇宙科学に関する機器を収容できる新たな屋外実験スペースを備えることになります。
相互運用無線システム（IORS）
本ミッションでは、アマチュア無線家と宇宙飛行士の交信を可能にするISS上のARISSプロジェクトにおける次世代無線システムの基礎となる、相互運用無線システム（IORS）の最初のフライトユニットも輸送されました。ARISSのハードウェアチームによって合計4個のフライトユニットが開発されています。CRS-20で運ばれた1基目のIORSは、2020年9月2日に第63次長期滞在クルーの指揮官クリス・キャシディ宇宙飛行士によってコロンバスモジュールに設置されました。この新しい無線システムは同日協定世界時01時02分に起動が確認され、地上管制局やアマチュア無線家によって初めてその信号が捉えられました。初期運用はFMクロスバンド・リピーターとして開始されました。2基目のIORSフライトユニットは、ISSのロシアモジュールに設置される予定で、2020年末の別の貨物ミッションで輸送されました。
ISS国立研究所関連
ドラゴン宇宙船には、ISSの研究施設や生命維持システムに必要なスペアパーツや交換部品も多数搭載されていました。特筆すべきは、ISSの尿処理システムを改良するためのハードウェアです。このシステムは宇宙飛行士の尿を飲料水として再利用するための重要な装置であり、今回運ばれた新しいコンポーネントは、その主要部である蒸留アセンブリの寿命を延ばす設計変更の試験を可能にします。これは、より長期間の生命維持装置の稼働が求められる将来の月面や火星への有人ミッションを見据えた、重要な技術実証の一歩となります。
スペースX CRS-20ミッションは、ドラゴン1宇宙船の歴史を締めくくり、多くの重要な科学実験や新しい外部プラットフォーム、そしてISSの運用に不可欠な物資をISSへ送り届けた成功裡のミッションでした。これは、スペースXとNASAの商業補給パートナーシップにおける第一段階の完了を告げ、その後のドラゴン2によるCRS-2契約へと繋がる重要な節目となりました。
CRS-20ミッションに投入されたドラゴンカプセル（機体番号C112）は、過去にもCRS-10およびCRS-16ミッションでISSへの飛行経験を持つ再利用機でした。打ち上げに使用されたファルコン9ロケットの第1段ブースター（機体番号B1059）も、先行するCRS-19ミッションで既に一度使用されたものです。
ドラゴンカプセルは打ち上げから2日後の2020年3月9日、協定世界時10時25分にISSへ到着しました。ドッキングポートへ固定するため、ISSのロボットアーム「カナダアーム2」がカプセルを捕捉しました。これは、カナダアームがドラゴン1を捕捉する最後の機会となりました。なぜなら、ドラゴン1の後継機である「カーゴドラゴン2」宇宙船は、ステーションに直接ドッキングする方式を採用しているからです。
このミッションは、当初の計画よりも遅れて実施されました。2016年2月には、NASAがスペースXとの間でCRS-1契約に基づき、CRS-16からCRS-20までの5回の追加ミッションを実施することで合意したと発表されました。その後、2016年6月のNASA監察官の報告書では、CRS-20は2019年の実施を予定していると記載されていましたが、2019年6月には打ち上げが2020年3月へ延期される見込みとなりました。
CRS-20ミッションでISSへ輸送された貨物の総重量は1,977キログラムに及びました。積荷の内訳は以下の通りです。
科学調査関連機材：960 kg
ステーションの船体ハードウェア：219 kg
乗組員の補給品：273 kg
船外活動（EVA）用装備：56 kg
コンピューター関連資材：1 kg
非与圧貨物（外部設置用）：バルトロメオ・プラットフォーム 468 kg
主要な積荷の詳細を見てみましょう。
科学調査
積荷の約半分を占める科学調査関連機材には、微小重力環境が幹細胞の挙動、腸疾患の進行、あるいは化学反応の効率などにどのような影響を与えるかを研究するための様々な実験装置やサンプルが含まれていました。
バルトロメオ・プラットフォーム
非与圧貨物として運ばれたバルトロメオは、ISSのコロンバスモジュールの外部に設置される多目的プラットフォームです。探検家クリストファー・コロンブスの弟にちなんで名付けられ、エアバス・ディフェンス・アンド・スペースが開発し、欧州宇宙機関（ESA）が運用を担当します。これはISSに設置された初の商用外部研究プラットフォームであり、最大12個のペイロード（実験装置など）を搭載可能で、電力供給やデータ伝送機能を提供します。バルトロメオはドラゴンのトランク部に搭載されており、2020年4月2日にISSのロボットアームによって取り出され、コロンバスモジュールの外側へ設置されました。その後、プラットフォームの機能を有効化するための電力線や通信線を接続するための船外活動が必要でしたが、ISSの乗員体制の都合から延期され、実際にステーションの乗員が最小定員の6名体制となったのは2020年8月以降でした。この施設の運用が始まると、コロンバスモジュールは、様々な材料科学、地球観測、宇宙科学に関する機器を収容できる新たな屋外実験スペースを備えることになります。
相互運用無線システム（IORS）
本ミッションでは、アマチュア無線家と宇宙飛行士の交信を可能にするISS上のARISSプロジェクトにおける次世代無線システムの基礎となる、相互運用無線システム（IORS）の最初のフライトユニットも輸送されました。ARISSのハードウェアチームによって合計4個のフライトユニットが開発されています。CRS-20で運ばれた1基目のIORSは、2020年9月2日に第63次長期滞在クルーの指揮官クリス・キャシディ宇宙飛行士によってコロンバスモジュールに設置されました。この新しい無線システムは同日協定世界時01時02分に起動が確認され、地上管制局やアマチュア無線家によって初めてその信号が捉えられました。初期運用はFMクロスバンド・リピーターとして開始されました。2基目のIORSフライトユニットは、ISSのロシアモジュールに設置される予定で、2020年末の別の貨物ミッションで輸送されました。
ISS国立研究所関連
ドラゴン宇宙船には、ISSの研究施設や生命維持システムに必要なスペアパーツや交換部品も多数搭載されていました。特筆すべきは、ISSの尿処理システムを改良するためのハードウェアです。このシステムは宇宙飛行士の尿を飲料水として再利用するための重要な装置であり、今回運ばれた新しいコンポーネントは、その主要部である蒸留アセンブリの寿命を延ばす設計変更の試験を可能にします。これは、より長期間の生命維持装置の稼働が求められる将来の月面や火星への有人ミッションを見据えた、重要な技術実証の一歩となります。
スペースX CRS-20ミッションは、ドラゴン1宇宙船の歴史を締めくくり、多くの重要な科学実験や新しい外部プラットフォーム、そしてISSの運用に不可欠な物資をISSへ送り届けた成功裡のミッションでした。これは、スペースXとNASAの商業補給パートナーシップにおける第一段階の完了を告げ、その後のドラゴン2によるCRS-2契約へと繋がる重要な節目となりました。
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