スポイレロンとは？意味をやさしく解説

スポイレロンとは

スポイレロン（英語: Spoileron）は、航空機の操縦に用いる動翼の一部であり、日本ではスポイエロンまたはスポエロンとも呼ばれています。この名前は、スポイラー（spoiler）とエルロン（aileron）を組み合わせた造語です。スポイレロンは、左右独立して動作するスポイラーを活用することで、エルロンと同様に機体のローリングを制御します。また、テイルロンや通常のエルロンと併用することもあります。

スポイレロンの開発目的

スポイレロンは、通常のエルロンを使用する際に発生するアドバース・ヨーやエルロン・リバーサルといった問題を抑えるために開発されました。エルロン・リバーサル対策としては、主翼後縁部内舷にエルロンを設置する方法や、エルロンとフラップを兼用するフラッペロンの使用が考えられますが、これらにはいくつかの問題が存在します。

1. 主翼後縁内舷にエルロンを設置した場合: この配置では後縁フラップを設置できなくなり、あるいは設置できたとしてもその範囲が狭くなります。結果として、離着陸速度が高くなり、短距離離着陸（STOL）性能にマイナスの影響を与えます。

2. フラッペロンの使用: フラッペロンを設けた場合でも、エルロン機能を維持するためには、比較的揚力係数の低い単純なフラップしか使用できません。このこともSTOL性能の最適化を妨げます。さらに、主翼後縁全体に高性能なフラップを設置できるため、STOL性能向上の観点からもスポイレロンは優れた選択肢となります。

スポイレロンの利点と短所

スポイレロンの最も大きな利点は、主翼後縁部に効果的なフラップ設置を可能にし、STOL性能を向上させられることです。加えて、高い揚力を発揮しつつ、高速飛行時の空気抵抗を抑えることも可能です。しかし、短所として、ローリングの際に下げる側の揚力が減少し、結果的に全体の揚力も低下してしまう点があります。この現象は特に可変翼機において問題となります。

多くの可変翼機が通常型エルロンやフラッペロンの代わりにスポイレロンを採用しているのは、このためです。具体例としては、F-111アードバーク、F-14トムキャット、トーネードIDS/ADV、MiG-23/-27フロッガー、Su-24フェンサーなどが挙げられます。

これらの機体は、離着陸時に求められる高い揚力を発揮しつつ、空気抵抗を最低限に抑えるという、相反する要求を満たすためにスポイレロンを採用しています。また、主翼が細長い設計であれば、通常型エルロンよりもエルロン・リバーサルの危険性が高まるため、スポイレロンがより適しています。

なお、後退角が大きい場合は、スポイレロンの効果が薄くなるため、大後退角時にはテイルロンによるローリング制御が多くの場合担われる設計がなされています。特筆すべきは、三菱重工業製のMU-2、MU-300、T-2、F-1といった航空機は、通常のエルロンやテイルロンを併用せず、スポイレロンのみでローリング制御を行う仕様となっています。

スポイレロン