スポケーンの左手

スポケーンの左手

『スポケーンの左手』（英語: A Behanding in Spokane）は、アイルランド系イギリス人の劇作家マーティン・マクドナーによって2010年に書かれたブラックコメディです。この作品は、マクドナーがアメリカを舞台にした最初の戯曲でもあります。初演はニューヨークのブロードウェイ、ショーンフェルド劇場で行われ、2010年2月15日にプレビューが始まり、3月4日に公式に開幕しました。公演は108回続き、同年6月6日に終了しました。

あらすじ

舞台はアメリカの小さな町のホテルの一室です。物語の中心となるのは、カーマイケルという名の神秘的な男です。彼は27年間にわたり、自身がかつて失った左手を探し続けています。この過程で、黒人青年トビーと彼の恋人マリリンは、カーマイケルが失った手を持っていると主張し、その手を返すことで報奨金を得ようと画策します。しかし、エキセントリックなホテルの従業員マーヴィンが交渉に加わり、状況は思わぬ方向へ進展していきます。

上演とキャスト

初演では、ジョン・クロウリーが演出を手掛け、カーマイケル役をクリストファー・ウォーケン、マーヴィン役をサム・ロックウェル、トビー役をアンソニー・マッキー、マリリン役をゾーイ・カザンがそれぞれ演じました。この作品は劇作家の特有なスタイルが色濃く反映されており、特にキャラクター同士の会話の中にあるブラックユーモアが評価されています。日本では2015年にシアタートラムにて上演され、小川絵梨子が翻訳・演出を担当しました。

批評

作品に対する批評は様々で、『ザ・ニューヨーカー』のヒルトン・アルスは、マクドナーが描くキャラクターの男性性の扱いが重要な要素として機能していると指摘しました。一方で『ニューヨーク・タイムズ』のベン・ベントリーは、マクドナーの典型的なキャラクターたちがハリウッド犯罪コメディの登場人物に非常に近いという感想を述べるなど、作品に対する意見は分かれます。また、日本語上演に関する批評でも、マクドナーの作品が単なる暴力描写にとどまらず、登場人物たちの感情のやりとりの温かさをも描いているとの賛辞が寄せられています。

受賞歴

初演時には、クリストファー・ウォーケンが2010年のトニー賞演劇主演男優賞、アウター・クリティックス・サークル賞の候補に挙げられるなど、演技が高く評価されました。作品自体も、2010年のドラマ・リーグ賞優秀上演賞にノミネートされました。日本での初演に際しては、演出家の小川絵梨子が菊田一夫演劇賞を受賞するなど、好評を博しました。

出典

この戯曲は、2016年に『Martin McDonagh, A Behanding in Spokane』として刊行されています。作品に対しての批評や分析は依然として続いており、劇作家マクドナーの作品の中でも特に興味深い位置づけを持っています。

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