スミスグループ

スミスグループ：宝石店からグローバル企業へ

1851年、サミュエル・スミスがロンドンで創業した宝石店を起源とするスミスグループは、現在ではエネルギー、医療、防衛、航空宇宙といった多様な分野で事業を展開するグローバル企業へと成長を遂げています。英国ロンドンに本社を置き、世界50カ国以上に事業拠点を持ち、ロンドン証券取引所に上場しています。

揺籃期から第一次世界大戦へ

当初は家族経営の宝石店としてスタートしたスミスグループは、1872年にはロンドンのウェストエンドに進出し、ダイヤモンド商として事業を拡大しました。転機となったのは、アラン・ゴードン・スミスによる自動車用速度計の発明です。この革新的な製品は、イギリス王室御用達にも選ばれ、スミスグループの名声を高めました。

1914年にはロンドン証券取引所に上場。第一次世界大戦中の軍需需要の高まりを背景に、急速な成長を遂げました。当時、世界初の無着陸大西洋横断飛行を成し遂げたビッカース ビミーにも、スミスグループ製の機器が搭載されていたことは、その技術力の高さを示しています。

戦間期から第二次世界大戦へ

戦間期には電気時計の製造を主要事業として展開。第二次世界大戦が始まると、航空機計器の製造工場を新設し、速度計や走行距離カウンターなどを大量生産しました。この期間の事業展開は、スミスグループの技術基盤をさらに強固なものにしました。

ジェット時代と医療機器への進出

1951年の創業100周年を機にスコットランドに時計工場を新設。世界初のジェット旅客機、デ・ハビランド コメットにもスミスグループ製の機器が多数搭載されました。また、エベレスト初登頂に際しても、特注の低温対応時計を提供するなど、その技術力は世界的に認められるようになりました。

1958年にはPortland Plasticsを買収（のちのスミスメディカル）し、医療機器分野に本格的に進出。航空機分野での経験を生かし、航空機の研究開発にも注力しました。1962年には、スミスグループ製の自動操縦装置がヴィッカース社の航空機に搭載され、ヒースロー空港へのブラインド着陸に成功するなど、航空業界に大きな貢献を果たしました。

国際展開とM&A戦略

1960年代には時計生産から撤退しましたが、1970年代以降はボーイング社への機器供給や医療機器分野の拡大により、国際的な事業展開を加速させました。1990年代以降は、積極的なM&A戦略によって収益を拡大。特に、アメリカのDeltecの買収は、医療用ポンプや血管部門への参入を可能にしました。2000年にはTI Group plcの買収・合併により、大企業としての地位を確固たるものとしました。その後も、医療機器関連企業の買収を続け、事業の多角化を進めています。2007年には、GEアビエーションに航空宇宙部門を売却しました。

現在の事業部門

現在、スミスグループは以下の5つの主要事業部門で構成されています。

ジョン・クレーン: エネルギー業界向けのメカニカルシールやフィルターソリューションを提供。
スミスメディカル: 医療機器の開発・製造。
スミスディテクション: 探知機や検査・スクリーニングソリューションを提供。
スミスインターコネクト: コネクト機器・プロテクト機器などの製造。
* フレックス・テック: ヒーターやホースなどの製造を通じて流体および加熱ソリューションを提供。

日本における事業展開

日本では、スミスメディカル、スミスディテクション、ジョン・クレーンの3部門が日本法人として事業を展開しています。それぞれ、東京、大阪、滋賀に拠点を構え、日本の医療、エネルギー、セキュリティ分野に貢献しています。

まとめ

スミスグループは、170年以上にわたる歴史の中で、常に技術革新と事業の多角化を追求し、グローバル企業へと成長を遂げました。創業時の宝石店から、現在のような多様な事業ポートフォリオを持つ企業へと変貌を遂げたその歴史は、企業の持続的な発展を示す好例と言えるでしょう。

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