スミレツ

スミレツ（第二次ブルガリア帝国の皇帝）

スミレツは、13世紀の末に第二次ブルガリア帝国の皇帝として在位した人物です。彼の生涯は謎に包まれており、その出自や治世については不明な点が多く残されています。

生涯

スミレツはブルガリアの貴族出身と考えられていますが、彼の先祖に関する明確な記録は残っていません。即位前は、兄弟のラドスラフ、ヴォイシルと共にバルカン山脈とスレドナ・ゴラ山脈にまたがる広い地域を支配していました。また、東ローマ帝国の皇族であるコンスタンティン・パレオロゴスの娘、スミレツナを妻とし、東ローマ帝国との婚姻関係を築きました。

スミレツが皇帝に即位した経緯は、ゲオルギ1世テルテルの退位後、ジョチ・ウルスの有力者であるノガイの支援を受けたこと以外、詳しく分かっていません。そのため、彼の治世はブルガリアにおけるジョチ・ウルスの影響力が最も強い時代であったと考えられています。1297年から1298年にかけてモンゴル軍がブルガリアに侵入し、村落が略奪される事件が発生しましたが、これは東ローマ帝国への入り口となるトラキア地方が中心であり、ブルガリア本国への直接的な攻撃は避けられていたようです。

外交面では、1296年または1297年に娘のテオドラをセルビアの王子ステファン（後のステファン・ウロシュ3世デチャンスキ）に嫁がせ、関係強化を図りました。しかし、セルビアによる領土併合を黙認し、セルビアがヴィディンを攻撃した際にも積極的な防衛姿勢を示さなかったとされています。

1298年、ノガイの子であるチャカの侵入を境に、スミレツの名前は歴史の表舞台から姿を消します。殺害されたか、あるいは戦いの中で病没したと考えられています。彼の死後、息子のイヴァン2世が一時的に帝位を継承しますが、幼かったため、実質的な権力はスミレツナが握りました。スミレツナはセルビア王ステファン・ウロシュ2世ミルティンにブルガリア全土を持参金として結婚を提案しますが、実現には至りませんでした。

家族

スミレツは、妻のスミレツナとの間に以下の3人の子供をもうけました。

イヴァン2世：ブルガリア皇帝（1298年 - 1299年）
テオドラ：セルビア王ステファン・ウロシュ3世デチャンスキの妻
マリナ：ゲオルギ1世テルテルの兄弟Aldimirの妻

スミレツの治世は短く、その生涯は謎に包まれていますが、当時のブルガリアがジョチ・ウルスの強い影響下にあったこと、そして周辺諸国との複雑な外交関係を築いていたことを物語っています。

参考文献

John V.A. Fine, Jr., The Late Medieval Balkans, Ann Arbor, 1987.
I.ディミトロフ、M.イスーソフ、I. ショポフ『ブルガリア 1』（寺島憲治訳, 世界の教科書=歴史, ほるぷ出版, 1985年8月）、102-103頁

外部リンク

Detailed list of Bulgarian rulers

もう一度検索