スライド・イット・イン

ホワイトスネイクの6枚目のスタジオアルバム『スライド・イット・イン』（Slide It In）は、バンドにとって重要な転換期を示す作品です。1982年の前作『セインツ・アンド・シナーズ』発表後、デイヴィッド・カヴァーデイル（ボーカル）を中心に、ミッキー・ムーディ（ギター）、メル・ギャレー（ギター）、コリン・ホッジキソン（ベース）、コージー・パウエル（ドラム）、ジョン・ロード（キーボード）という新たなメンバー構成でレコーディングが行われました。ドイツで制作されたこのアルバムは、1984年にイギリスでリリースされ、全英トップ10入りを果たすヒット作となりました。

しかし、その後のメンバーチェンジが、このアルバムの複雑な歴史を形作ります。ジョン・ロードは再結成したディープ・パープルへの参加のため脱退し、ミッキー・ムーディとコリン・ホッジキソンもそれぞれジョン・サイクス（ギター）とニール・マーレイ（ベース）に交代しました。このメンバー変更は、特にアメリカでのリリースに大きな影響を与えました。

アメリカでは、UK盤とは異なる『USミックス』がリリースされました。このバージョンでは、ミッキー・ムーディとコリン・ホッジキソンの演奏パートがジョン・サイクスとニール・マーレイの演奏に差し替えられ、さらにビル・クオモのキーボードが追加されました。これにより、サウンドはよりアメリカの市場に合わせたものとなり、アルバムは新たな魅力を獲得しました。同じアルバムでありながら、UK盤とUS盤では、そのサウンドが大きく異なるという非常に興味深い作品となりました。

2019年には、アルバムリリース35周年を記念して、さまざまなエディションがリリースされました。『スライド・イット・イン：アルティメット・スペシャル・エディション』には、『UKミックス』と『USミックス』の最新リマスター音源に加え、新たにミックスダウンされた『2019リミックス』、未発表音源、ライブ映像などが収録されました。また、『スライド・イット・イン：35周年記念デラックス・エディション』では、UKミックスとUSミックスの最新リマスター音源が、『スライド・イット・イン：35周年記念リマスター』ではUSミックスの最新リマスター音源がそれぞれ収録されました。これらのリリースは、このアルバムの多様な側面を改めて評価する機会を提供し、ファンにとっては必携のアイテムとなりました。

これらのリリースは、単なるリマスターにとどまらず、アルバムの歴史と進化を深く理解する手がかりとなります。特に、UKミックスとUSミックスの違いは、音楽制作における地域性やターゲットオーディエンスの違いを明確に示しており、興味深い比較材料となります。35周年記念盤を通じて、このアルバムが持つ多彩な魅力を再発見し、より深く音楽を楽しむことができるでしょう。

収録曲

UKリリース

UK盤には以下の曲が収録されています。

1. Gambler
2. Slide It In
3. Slow an' Easy
4. Love Ain't No Stranger
5. All or Nothing
6. Spit It Out
7. Guilty of Love
8. Standing in the Shadow
9. Hungry for Love
10. Need Your Love So Bad

アメリカ合衆国とカナダでのリリース

アメリカ合衆国とカナダでリリースされたUSミックスでは、収録曲が一部変更されています。

1. Gambler
2. Slide It In
3. Slow an' Easy
4. Love Ain't No Stranger
5. All or Nothing
6. Spit It Out
7. Guilty of Love
8. Standing in the Shadow
9. Hungry for Love
10. Give Me More Time

脚注

出典

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