スラヴォニア軍政国境地帯

スラヴォニア軍政国境地帯

スラヴォニア軍政国境地帯（クロアチア語: Slavonska vojna krajina or Slavonska vojna granica、ドイツ語: Slawonische Militärgrenze、セルビア語: Славонска војна крајина、ハンガリー語: Szlavón határőrvidék）は、ハプスブルク帝国、オーストリア帝国、そしてオーストリア・ハンガリーの時代に存在した軍政国境地帯です。

歴史

スラヴォニア軍政国境地帯という名称は、歴史の中で二度使用されました。

前期

前期は、対オスマン帝国の最前線としてクロアチア王国に設置され、中央クロアチア北部に位置していました。ヴァラジュディン将軍区としても知られ、中世のクロアチア＝スラヴォニア王国のバンが統治していた領土の一部に設けられました。

1553年の創設時、前期スラヴォニア軍政国境地帯は東でオスマン帝国、西でハプスブルク家領クロアチア王国、南西でクロアチア軍政国境地帯、北でハプスブルク家領ハンガリー王国と接していました。

後期

1699年のカルロヴィッツ条約締結後、ハプスブルク帝国は領土を東へ拡大し、サヴァ川、ドナウ川、ティサ川、ムレシュ川沿いに新たな軍政国境地帯が設立されました。この新たな地域は二つの将軍区に分割され、そのうちの一つが後のスラヴォニア軍政国境地帯の主要部分となりました。18世紀半ばまでスラヴォニア全域が軍政下にありましたが、1745年に北部スラヴォニア王国が民政下に置かれました。そして、軍事政権下に残ったスラヴォニア南部が新たなスラヴォニア軍政国境地帯として組織されました。旧スラヴォニア軍政国境地帯はクロアチア軍政国境地帯に編入され、ヴァラジュディン総司令部となりました。

後期のスラヴォニア軍政国境地帯は、オーストリアがオスマン帝国から征服した領土から形成され、スラヴォニア南部とスリイェム南部が含まれていました。現在、該当する地域は主にクロアチアにあり、その最東端がセルビア北部（主にヴォイヴォディナ地域）に位置しています。

18世紀後半には、後期のスラヴォニア軍政国境地帯は西でクロアチア王国とクロアチア軍政国境地帯、北でスラヴォニア王国とハンガリー王国、東でバナト軍政国境地帯、南でオスマン帝国領ボスニア州及びスメデレヴォ県と接していました。1783年にはザグレブのクロアチア総司令部の管理下に置かれました。1881年にクロアチア＝スラヴォニア王国へ「返還」されるまでにあった国境の変化は、1848年から1849年まで北東に存在していたハプスブルク家領セルビア侯国がスラヴォニア軍政国境地帯の東部を編入し、その後1849年から1860年にかけてセルビア侯国及びテメシュヴァール公国が存在していたときのみでした。周辺地域では1815年に第二次セルビア蜂起が起こって1817年にセルビア公国が成立し、スラヴォニア軍政国境地帯は南東でセルビアと接するようになりました。

軍

前期スラヴォニア軍政国境地帯はヴァラジュディンに総司令部を置き、ザグレブまでの中央クロアチアに展開していました。後期スラヴォニア軍政国境地帯はオシエクに総司令部を置き、3つの連隊に分けられました。すなわち、ヴィンコヴツィに本部を置くN°VII連隊、グラディシュカに本部を置くN°VIII連隊、ペトロヴァラディンに本部を置くN°IX連隊の3つです。スラヴォニア軍政国境地帯の他の重要な町には、スレムスキ・カルロヴツィ、スターラ・パゾヴァ、ゼムン、スレムスカ・ミトロヴィツァがありました。

人口統計

以下は、後期スラヴォニア軍政国境地帯の人口統計です。

1776年

1776年、スラヴォニア軍政国境地帯の農村人口は177,212人でした。内訳は、ローマ・カトリックの男性が43,635人、正教会の男性が33,970人でした。都市人口は11,353人で、合計188,565人でした。

ブロド連隊とグラディシュカ連隊ではカトリック教徒が正教徒の数を上回っており、ペトロヴァラディン連隊では正教徒の数が多かった。

1820年

1820年、スラヴォニア軍政国境地帯の人口には、117,933人のカトリック教徒と117,274人の正教徒が含まれていました。

1870年

1870年の公式な国勢調査によると、スラヴォニア軍政国境地帯には246,901人の住民がおり、その内143,873人はカトリック教徒であり、92,991人は正教徒（東スリイェムに多かった）でした。

ブロド連隊：82,540人の住民（カトリック教徒73,892人、正教徒6,886人）
グラディシュカ連隊：61,596人の住民（カトリック教徒45,601人、正教徒15,933人）
ペトロヴァラディン連隊：102,765人の住民（正教徒70,172人、カトリック教徒24,380人）

関連項目

ブロド要塞
クロアチア軍政国境地帯
スラヴォニア王国
クロアチア＝スラヴォニア王国

参考文献

河野淳『ハプスブルクとオスマン帝国：歴史を変えた＜政治＞の発明』講談社＜講談社選書メチエ＞、2010年。ISBN 978-4-06-258471-5
* カール・カーザー『ハプスブルク軍政国境の社会史：自由農民にして兵士』（越村勲・戸谷浩編訳）学術出版会、2013年。ISBN 978-4-284-10398-5

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