スリウィジャヤ航空182便墜落事故

スリウィジャヤ航空182便墜落事故について

2021年1月9日、インドネシアのスカルノ・ハッタ国際空港を離陸したスリウィジャヤ航空182便が、ジャワ海に墜落するという痛ましい事故が発生しました。この事故により、乗員乗客合わせて62人全員が亡くなるという、非常に悲しい結末となりました。

事故の概要

スリウィジャヤ航空182便は、ボーイング737-524型機で、ジャカルタのスカルノ・ハッタ国際空港から、ポンティアナックのスパディオ空港へ向かう予定でした。しかし、離陸直後に機体は制御不能となり、ジャワ海に墜落しました。この事故により、乗員12名と乗客50名、計62名全員が犠牲となりました。

事故機について

事故を起こしたボーイング737-524型機（機体記号：PK-CLC）は、1994年に製造された機体で、コンチネンタル航空やユナイテッド航空での運用を経て、2012年からスリウィジャヤ航空で使用されていました。この機体には、2基のCFMインターナショナルCFM56-3B1エンジンが搭載されており、「Citra（印象、象徴）」という愛称で親しまれていました。

搭乗者

当初、乗客56名と乗員6名と報じられましたが、後に運輸省と国家捜索救助局の会見で、乗客50名、乗員12名に訂正されました。搭乗者には、子供7名と幼児3名が含まれていました。乗員の内訳は、機長と副操縦士に加え、客室乗務員4名、そしてデッドヘッドとして搭乗していたパイロットを含む6名の乗員でした。

事故の経緯

182便は、当初の予定より出発が遅れ、14時14分にスカルノ・ハッタ国際空港の滑走路35Rから離陸しました。離陸後、機体は高度約4,000mを目指して上昇を開始しましたが、約2,330mから3,300m付近を上昇中に急降下を開始しました。離陸からわずか4分後には急降下を開始し、1分足らずで約3,000mも高度を失ったと記録されています。管制官との最後の交信は14時40分頃でした。機体はジャワ海上空で急降下し、スカルノ・ハッタ国際空港の北東約19km、ラキ島付近に墜落したと推測されています。

事故後の捜索活動

墜落を目撃した地元の漁師や、セリブ諸島の住民からの証言により、墜落地点の特定が進められました。漁師は機体の一部が近くに落下したこと、住民は2度の爆発音を聞いたと話しました。事故の一報は14時30分頃に報告され、機体が海面に急降下し、爆発したと伝えられました。

インドネシア政府は、直ちに捜索活動を開始しました。国家捜索救助局は、墜落現場に職員を派遣し、インドネシア警察や運輸省も緊急対策本部を設置しました。インドネシア海軍は、ヘリコプターや艦船、そして特殊部隊KOPASKAを投入しました。インドネシア運輸安全委員会（NTSC）は、海洋調査船バルナ・ジャヤを派遣し、過去の航空機事故の捜索経験を活かして支援しました。

捜索活動では、機体の残骸、遺体の一部、そして航空燃料が発見されました。1月10日には、救命胴衣や機体の胴体部の破片、そして事故機のものと思われるタービンが回収されました。また、墜落現場の正確な座標も特定され、ダイバーによる捜索も開始されました。1月10日には、事故機のブラックボックスからの信号が捉えられました。その後、機体のドアや対地接近警報装置、電波高度計などの残骸も回収されました。

1月21日、国家捜索救助局は、犠牲者の捜索を中止することを発表しました。

事故調査

NTSCは、事故原因を究明するための調査を開始しました。アメリカ国家運輸安全委員会（NTSB）も調査に協力しました。初期調査では、機体が29,000フィートまでの上昇を許可されていたにも関わらず、上昇中にコースを逸脱したことが明らかになりました。また、スリウィジャヤ航空は、事故機が老朽化していたものの、耐空性はあったと説明しました。

2021年2月の中間報告では、事故機に搭載されたオートスロットルに異常が見られたと指摘され、機体の推力を制御するコンピューターが「フラップシンクロワイヤ」の不具合を見逃し、機体制御不能に陥った可能性が示唆されました。この報告を受けて、米連邦航空局（FAA）は、ボーイングに対し、737-300、737-400、737-500型機の計143機の点検を命じました。

2022年11月10日、NTSCは最終報告書を発表しました。報告書では、事故原因はオートスロットルの故障による左右の推力非対称と結論付けました。この不均衡により、機体は左に傾いて急降下し、訓練不足のパイロットは機体を立て直すことができませんでした。

スリウィジャヤ航空182便墜落事故