スリランカ交通局

スリランカ交通局（SLTB）は、スリランカにおける主要なバス事業者であり、かつてはセイロン交通局（CTB）として知られていました。2022年現在、約6,900台のバスと26,000人以上の従業員を抱える大規模な組織です。

歴史

スリランカでのバス事業は1907年に始まりましたが、当初は個人事業主による運営でした。規制がなかったため、各事業者が独自のルートを走り、交通渋滞を引き起こす原因となりました。1930年代半ばには、安全や快適さが損なわれる状況となり、1940年頃にイギリスによってバス運行を担う企業が設立され、公共交通規制が始まりました。

その後、バス事業の国営化が提言され、1958年1月1日にセイロン交通局（CTB）が設立されました。設立時には、メルセデス・ベンツ製の高級バスが使用され、当時の首相と交通大臣が乗車しました。ピーク時には、CTBは7,000台のバスと50,000人の従業員を抱える世界最大のバス事業者でした。しかし、1979年に民営化が開始され、衰退の一途を辿りました。CTBは全国を事業区域として、長距離路線や地方路線を数多く運行していました。

民営化当初は複数の地域に分社化されましたが、2005年に超党派の議会支援のもと、スリランカ交通局（SLTB）として再統合されました。

運行形態

SLTBは、都市路線と地方路線を運行しています。特に地方では、民間事業者が参入しにくい非採算路線を担っています。

都市路線

最大都市コロンボでは、バスが主要な公共交通手段であり、SLTBも重要な役割を担っています。コロンボのペター地区にはバスセンターがあり、市内バス交通の中枢となっています。コロンボの道路交通は、中心部と郊外を結ぶ放射路線と、郊外同士を結ぶ環状路線で構成されています。バス路線は放射道路に沿って運行されることが多く、バス専用レーンがないため、ピーク時には交通渋滞が発生します。この問題を解決するため、バス高速輸送システム（BRT）の導入が提案されていますが、実現には至っていません。

都市間路線

州間路線

州間路線はコロンボを中心に、キャンディやクルネーガラなどの地方都市へと続いています。多くの路線は100kmを超える長距離バスですが、郊外や地方発着の短距離便も存在します。最長路線は北部州の州都ジャフナから南部のカタラガマを結びます。カタラガマバス停は、スリランカ国内全ての州からバスが発着する唯一のバス停です。

州内路線

西部州内の路線は、コロンボ発着が多く、コロンボ県内の都市路線やカルタラ、ガンパハを結ぶ中距離都市間路線も含まれます。州内路線で運行距離が最も長いのは東部州と北部州です。

高速バス

SLTBは都市間輸送バスを多数運行しています。2012年1月時点では、南部高速道路を走る高速バスを運行する国内唯一の事業者でした。高速バスにはアショック・レイランド製の新型バスが使用され、ゴール-マハラガマ間を2時間おきに運行していました。

2013年には、コロンボ-カトゥナーヤカ高速道路を利用して、ニゴンボ、カトゥナーヤカ、プッタラムなどとコロンボを結ぶバス路線が開設されました。特に、コロンボ-ニゴンボ線は、バンダラナイケ国際空港への空港バスとしての側面も持ち、2022年時点では1日20本運行する最頻路線となっています。

主な路線

- 南部高速道路

- マハラガマ - ゴール線
- マハラガマ - マータラ線
- カドゥウェラ - ゴール線
- カドゥウェラ - マータラ線
- カダワッタ - ゴール線
- カダワッタ - マータラ線
- ゴール - コロンボ（ペター）線
- マータラ - コロンボ（ペター）線

- コロンボ - カトゥナーヤカ高速道路

- コロンボ - カトゥナーヤカ線
- コロンボ - ニゴンボ線

車両

SLTBは、アショック・レイランドの他に、デニス、ボルボ、宇通客車、タタ、三菱、いすゞなど、さまざまなメーカーの車両を使用しています。2011年には運行車両を拡充し、ボルボに新車を発注しました。新車は低床式のエアコン車で、コロンボで試験運行を実施しました。

カラーリング

ほとんどの車両は、視認性の高い赤色で塗装されています。

過去のカラーリング

CTB時代のバスは、赤と青のツートンカラーが採用されていました。当時は、赤いロンドンバスの中古車を半分だけ青く塗り直すことでコストを削減していました。また、アルミニウム製のバスが主流になった際には、塗装をせず、前面を赤、後面を青で塗装することでコストを削減しました。

ロゴ

CTB時代は、青地の楕円形にCTBの文字と、セイロン交通局の文字をシンハラ語とタミル語で表記していました。1970年からは、楕円の中心にライオンの紋章が追加されました。現在のロゴは、1970年代のものと類似しており、SLTBとラテン文字で表記されています。

競合

SLTBは、他の民間バス事業者やスリランカ国鉄と競合関係にあります。バスと鉄道などの交通手段との調整が不足しており、顧客の奪い合いが発生しています。また、鉄道とバスの乗り継ぎ乗車券や、鉄道の時刻表に合わせたバス路線の整備も進んでおらず、効率性が低いのが現状です。