スリランカ鉄道

スリランカ鉄道（Sri Lankan Railways, SLR）は、スリランカの鉄道輸送を担う国営企業であり、その歴史は1858年にまで遡ります。首都コロンボに本部を置き、運輸・民間航空省の管轄下で運営されています。スリランカの鉄道網はほぼこのSLRによって支えられており、1日に約35万人の乗客と貨物を輸送しています。また、国内でも有数の雇用主であり、約1万4千人の従業員を抱えています。総延長1,508kmの路線、312の駅を有し、138両の機関車、500両の客車、683両の貨車、そして128両のタンク車を保有しています。

歴史

スリランカの鉄道は、1864年にイギリス植民地時代に初めて導入されました。当初の目的は、内陸部の茶畑やコーヒー畑からの産物をコロンボ港へ輸送することでした。最初に開業したのはコロンボとアンベプッサを結ぶメインラインの54km区間です。その後、メインラインはキャンディ、ナワラピティヤ、ナヌオヤ、バンダラウェラ、バドゥッラへと徐々に延伸されました。他の路線も次々と開通し、1928年までに主要な鉄道網が形成されました。しかし、その後の80年以上にわたって、鉄道網に大きな変化はありませんでした。

黄金時代と衰退期

1955年から1970年までの15年間は、スリランカ鉄道の黄金時代と呼ばれ、駅の改修や速達列車の導入が進められました。蒸気機関車がディーゼル機関車に置き換えられたのもこの時期です。しかし、1970年以降の30年間は衰退期に突入します。経済の中心が農業から工業へシフトし、道路網が整備されたため、鉄道への投資は後回しにされました。貨物輸送もトラック輸送に移行し、鉄道の利用は減少しました。技術革新も停滞し、所要時間が長い、時刻の正確性が低いなどの問題を抱えたまま、2011年には旅客輸送の市場占有率は7％まで落ち込みました。

復興期

2010年代に入り、スリランカ政府は鉄道の発展のための10年計画を策定し、新型車両の導入や路線復旧を進めています。2004年のスマトラ島沖地震で被害を受けたコーストラインは、スピードアップ工事が行われ、最高時速100kmでの運行が可能になりました。また、30年にわたる内戦で寸断されていたノーザンラインも復旧し、ジャフナやカンケサントゥライまで再び列車が走るようになりました。

運行形態

スリランカ鉄道では、都市間鉄道とコロンボ都市圏内の通勤列車を運行しています。都市間鉄道には、インターシティ（最速達列車）、夜行列車、急行、普通列車などの種別があります。また、1等寝台車、1等展望車、1等エアコン車、2等車、3等車などの車両等級が設定されており、乗客は自身の予算や好みに合わせて座席を選ぶことができます。かつてはラジャダニ・エクスプレスやエキスポ・レールなどの列車で、車内での軽食サービスも提供されていました。

課題

スリランカ鉄道は、多くの課題を抱えています。まず、財政状況が深刻で、1943年以降赤字経営が続いています。老朽化したインフラの維持費や過剰な人件費が財政を圧迫しています。また、地元住民に対する差別も指摘されており、外国人観光客と地元住民でトイレの設備が異なるなど、不公平な状況が存在します。インフラも老朽化が進み、車両の輸送能力の低下やサービスの質が問題となっています。さらに、道路やバスとの連携が不十分で、乗客の利便性を損なっています。安全性についても課題があり、線路への立ち入りが容易なため、自撮り中の事故が多発しています。過去には、列車事故やテロ事件も発生しており、安全対策の強化が求められています。

まとめ

スリランカ鉄道は、スリランカの歴史とともに歩んできた重要な交通インフラです。しかし、設備の老朽化、財政難、安全性の問題など、多くの課題を抱えているのも事実です。これらの課題を解決し、鉄道を近代化することで、スリランカの経済発展と人々の生活を支えることができると考えられます。

過去の主な事故

1964年3月18日：ミリガマ近郊で列車が脱線、60人以上が死亡。
1985年1月19日：LTTEによる急行Yal Devi号爆破事件、11人の民間人が死亡。
1996年7月24日：LTTEによる列車爆破テロ、デヒワラで70人の民間人が死亡。
2001年8月19日：アラッワ - ランブッカ間で車両が脱線、46名が死亡。
2002年1月：ランブッカナ近くで列車が脱線、15人以上が死亡。
2002年6月13日：脱線した列車がアラッワ駅へ突入、14人が死亡。
2004年12月26日：スマトラ島沖地震による津波で列車が流され、1,700名以上が死亡（世界最大の鉄道事故）。
2005年4月26日：ポルガハウェラ近郊で列車がバスに衝突、バスの乗客37名が死亡。
* 2017年6月13日：コロンボ市内の線路上で自撮り中の兄弟が列車に轢かれる事故が発生。

備考

スリランカ鉄道の軌間は全線1,676mmの広軌です。電化はされていませんが、将来的に検討されています。

スリランカ鉄道公式サイト

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