スーパーグループ (分類学)

スーパーグループ

はじめに

生物の多様性を整理し、その進化的な関係性を理解するための分類学において、真核生物の高次分類群として近年注目されている概念が「スーパーグループ」です。この概念は1980年代頃から提唱され始め、従来の界や門といった階級よりも上位に位置する、より広範な生物群をまとめる試みとして誕生しました。特に、共通の祖先から派生した全ての子孫を含む「単系統群」を重視する現代分類学において、スーパーグループは非常に重要な役割を担っています。日本ではまだ専門的な文脈以外ではあまり一般的ではない言葉かもしれませんが、真核生物全体の進化的な関連性を描く上で欠かせない枠組みとなっています。

スーパーグループの定義と位置づけ

スーパーグループは、生物分類の階級における「門」や「界」を下位のグループとして含むような、上門、亜界、界、上界といった幅広いレベルに相当する単系統群を指します。言い換えれば、スーパーグループに含まれる全ての生物は、ある共通の祖先から進化してきたと系統解析によって強く支持される集まりです。この概念が提唱された背景には、従来の限られた形態情報に基づいた大分類体系だけでは、真核生物の進化の歴史を正確に反映しきれないという認識がありました。近年のDNAやRNAといった分子情報に基づいた系統解析の爆発的な進展により、スーパーグループの輪郭はより鮮明になり、真核生物の多様性を進化的な視点から捉え直す基盤を提供しています。

代表的なスーパーグループと体系の変遷

スーパーグループとしてよく知られているものとしては、国際原生生物学会（ISOP）が2005年に提示した分類体系における6つの大きなグループがあります。具体的には、オピストコンタ（動物界や菌界を含む）、アメーボゾア（アメーバや粘菌など）、アーケプラスチダ（植物界や様々な藻類）、クロムアルベオラータ（褐藻類、珪藻類、繊毛虫、アピコンプレクサなど）、リザリア（有孔虫や放散虫など）、エクスカバータ（一部の鞭毛虫類など）が挙げられます。これら以外にも、クロムアルベオラータの一部であったストラメノパイルやアルベオラータ、あるいは盤状クリステ類（ディスキクリスタータ）なども、しばしばスーパーグループとして扱われます。

しかし、生物分類は静的なものではなく、新しい研究成果によって常に改訂が進んでいます。スーパーグループ間の関係性や定義もまた、進化系統に関する知見の蓄積に伴い見直されてきました。例えば、初期に広く認められていたクロムアルベオラータは、その単系統性に疑問が呈されるようになり、後の分類体系では解体されました。その代わりに、ストラメノパイル、アルベオラータ、リザリアという3つのスーパーグループが互いに近縁であることが示され、これらの頭文字を取ったSARスーパーグループという新しいまとまりが提唱され、ISOPの2012年版分類体系で主要なグループとして採用されました。さらに、2019年に発表された最新の分類体系では、かつてスーパーグループとされていたエクスカバータも、メタモナズ、ディスコバ、マラウィモナズといった、さらに細分化された複数のグループに分割されています。これらの変遷は、スーパーグループという概念が、生物の進化的なつながりをより正確に反映するために、絶えず進化し続けている証と言えます。

より高次の分類群：メガグループ

スーパーグループは真核生物全体をいくつかの大きなまとまりに整理する枠組みですが、研究はさらに進み、いくつかのスーパーグループを統合した、より高次の単系統群を提唱する試みも行われています。このような、スーパーグループよりも上位に位置するグループは、メガグループと呼ばれることがあります。具体例としては、アーケプラスチダ、ハプト藻・クリプト藻、そしてSARスーパーグループを一つのまとまりと見なす説が提唱されており、これは「Plants+HC+SAR megagroup」、あるいはディアフォレティケスとも呼ばれます。メガグループという概念は、スーパーグループ間の大まかな関係性や、真核生物の多様性の起源をさらに広範な視点から探るものです。

まとめ

スーパーグループという概念は、形態だけでなく分子情報に基づいた系統解析の成果を取り入れることで、真核生物の広大な多様性を進化的な歴史に沿って理解するための、現代分類学における強力なツールです。従来の分類階級の枠を超えて、真に進化的なまとまり（単系統群）を柔軟に定義・再定義することで、私たちは地球上に存在する多様な真核生物たちがどのように進化してきたのか、その複雑な系譜をより正確に描くことができるようになりました。スーパーグループやメガグループといった概念は、生物分類体系が、最新の科学的知見を取り込みながら常に更新されていく、生きた知識体系であることを示しています。これらの新しい分類の枠組みを理解することは、私たちの足元から地球の隅々にまで広がる真核生物たちの世界の奥深さを知るための一歩となるでしょう。

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