スープ皿の聖母

スープ皿の聖母

『スープ皿の聖母』（伊: Madonna della Scodella）は、ルネサンス期の画家コレッジョが1528年頃に制作した油彩画であり、彼の代表作の一つです。この作品は、聖家族のエジプトへの逃避途中の休息を描いており、聖母マリアが手にしているスープ皿が名前の由来となっています。

主題

『新約聖書』のマタイによる福音書によれば、ヘロデ王による幼児虐殺から逃れるため、聖家族は幼いイエスを連れてエジプトへ向かいました。外典福音書によると、その旅の途中でナツメヤシの木の下で休息した際、聖母マリアは木の枝に実がなっているのを見つけ、聖ヨセフに取るよう頼みます。しかし、枝は高く手が届きませんでした。その時、幼子イエスの奇跡により枝がたわみ、ヨセフは実を取ることができ、さらに木の根元からは泉が湧き出たとされています。

作品

コレッジョは、この外典福音書に記された場面を絵画化しました。画面上部では、天使たちが雲と共に現れ、ナツメヤシの枝をたわませる奇跡を起こしています。聖ヨセフは、そのおかげで取れたナツメヤシの実を幼子イエスに渡しています。聖母マリアは木の根元から湧き出る泉のそばに腰を下ろし、イエスが指し示す泉から水を汲もうと、腕まくりをしてスープ皿を泉へ伸ばしています。画面の右端では、天使がロバを繋ぎ、左端では天使が聖母のスープ皿に水を注いでいます。

大胆な構図は、画面を斜めに横切る対角線によって強調されており、聖母子と聖ヨセフの腕の動きがこの線を延長しています。発注主の意向を反映し、画面の中心にはナツメヤシを差し出す聖ヨセフが大きく描かれています。特に、彼の手とそれを受け取るイエスの手は、光を受けて明るく照らされています。彼らの身振りや視線は互いに結びつき、イエスは画面両端で起こる奇跡を示唆し、さらに視線を画面外へ向けることで、鑑賞者を絵画の世界に引き込む役割を果たしています。

天使たちの表現は、コレッジョの他の作品、『聖母被昇天』や『羊飼いの礼拝』と共通する特徴が見られます。また、対角線上に配置された聖家族の構成は、コレッジョの作風をよく表しており、彼らの身振りは流れるように統一されています。聖母の姿勢や微笑みからはレオナルド・ダ・ヴィンチの影響が、紫、白、オレンジがかった黄色など色使いからはラファエロ・サンツィオの影響が指摘されています。

額縁

イオニア式の円柱を備えた古典的な額縁は、コレッジョ自身が下絵を描き、マルカントニオ・ツッキが制作したと考えられています。額縁には1530年の年号が記されており、これが祭壇画の制作年とする説と、祭壇画自体は1、2年早く制作されたとする説があります。

来歴

この絵画は、ヴァザーリによって「神聖な絵画の板絵、サンセポルクロ教会の聖ヨセフ礼拝堂にある素晴らしい人物たち」と称賛され、その後も多くの画家たち、レリオ・オルシ、フェデリコ・バロッチ、ジョヴァンニ・ランフランコ、ドメニキーノ、カルロ・マラッタ、ポンペオ・バトーニらによって研究されました。特に、フェデリコ・バロッチは本作品から影響を受けて『エジプトへの逃避途上の休息』を制作したことで知られています。絵画は長年教会に保管されていましたが、1796年にナポレオン軍によってパリに持ち去られ、1816年に返還された後、現在はパルマ国立美術館に収蔵されています。

複製

16世紀には、ジローラモ・マッツォーラ・ベドリによって早くも複製が制作されています。この複製画は、サン・ピエトロ・マルティーレ教会に由来するものとされ、現在ではパルマ国立美術館に所蔵されています。

脚注

参考文献

ルチア・フォルナーリ・スキアンキ『コレッジョ イタリア・ルネサンスの巨匠たち28』森田義之訳、東京書籍（1995年）

外部リンク

パルマ国立美術館公式サイト, コレッジョとして知られるアントニオ・アッレグリ『スープ皿の聖母と呼ばれるエジプトへの逃避途上の休息』

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