外典福音書

外典福音書とは

外典福音書とは、キリスト教の正典として認められていない福音書の総称です。これらの書物は、正典福音書とは異なる視点からイエス・キリストの生涯や教えを伝えており、初期キリスト教の多様な思想や信仰を理解する上で重要な資料となります。

外典福音書の成立

外典福音書の中で最も古いものとしては、『トマスによる福音書』や『ペトロによる[[福音書]]』が挙げられます。2世紀には、イエスの幼年時代の奇跡やマリアの生涯を描いた「幼時福音書」が書かれました。これらの書物は正典には含まれませんでしたが、キリスト教徒の間で広く読まれ、伝承として受け継がれていきました。

また、四つの福音書を一つにまとめた「合併福音書」も古代から存在しました。最も古い例は、2世紀にタティアヌスが編纂した『ディアテッサロン』です。これはシリア地方で広く用いられましたが、後に廃れていきました。

マルキオンの福音書

2世紀には、シノペのマルキオンが、グノーシス主義の影響を受け、ルカ福音書を自らの思想に合わせて書き換えました。彼は旧約聖書の神を裁きの神として退け、イエスを派遣した異邦の神を愛の神と捉えました。このマルキオンの福音書は、当時のキリスト教における多様な解釈を示しています。

著名な外典福音書

外典福音書には、以下のようなものがあります。

トマスによる福音書: イエスの語録集であり、正典福音書とは異なるイエスの教えを伝えています。
フィリポによる福音書: グノーシス主義的な思想が色濃く反映されています。
ペトロによる[[福音書]]: ペトロがイエスの受難と復活を語る形式をとっています。
(マグダラの)マリアによる福音書: マグダラのマリアがイエスの教えを伝えたとされる福音書です。
エジプト人の福音書: グノーシス主義的な内容を含んでいます。
ヘブライ人の福音書: わずかな断片のみが現存しています。
真理の福音書: グノーシス主義の教えを伝える書物です。
ユダの福音書: ユダがイエスを裏切ったとされる従来の解釈を覆す内容です。
* テトロの福音書: 断片的な内容のみが知られています。

これらの外典福音書の多くは、ナグ・ハマディ写本から発見されたグノーシス主義的な文書であり、正典とは異なる視点からイエスをとらえています。

その他の外典福音書

外典福音書には、イエスの母マリアに焦点を当てたものもあります。『ヤコブ原福音書』や『トマスによるイエスの幼児物語』は、イエスの誕生から幼年時代までの物語を詳細に描いており、中世の宗教画にも影響を与えました。

また、中世以降や近代以降に書かれた外典福音書も存在します。『バルナバによる福音書』は中世に書かれたものであり、『宝瓶宮福音書』や『イッサの生涯』は近代に書かれたものです。

外典福音書の重要性

外典福音書は、キリスト教の正典には含まれないものの、初期キリスト教の思想や信仰の多様性を知る上で重要な資料です。これらの書物を研究することで、正典福音書だけでは見えてこない、キリスト教の歴史や文化の多層的な側面を理解することができます。

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