ズール (恐竜)

ズール（Zuul）

ズールは、モンタナ州のジュディスリバー累層で発見された、曲竜類アンキロサウルス科に属する恐竜の一属です。模式種はズール・クルリヴァスタトル（Zuul crurivastator）と名付けられました。属名は、映画『ゴーストバスターズ』に登場する同名のキャラクターに由来し、種小名は「脛を破壊する者」という意味を持ちます。

ズールの化石標本は、アンキロサウルス類としては初めて、ほぼ完全な頭骨と尾椎が揃って発見されたことで注目されています。これは、北米で見つかったアンキロサウルス類の標本の中でも、最も保存状態が良いものの一つとされています。また、この標本は、皮骨、ケラチン、皮膚痕といった貴重な情報を保持しています。

形態と特徴

ズールは、全長約6メートル、体重約2.5トンと推定されています。他のアンキロサウルス類と比較して、いくつかの際立った特徴を持っています。

頭骨の装甲タイル: 鼻骨と前頭頂骨にある装甲タイルが重なり合って上向きに配置されている。
鱗状骨の角: 頭骨後端にある鱗状骨の角に、長く目立つ溝がある。
尾の骨棘: テールハンマーの柄にある骨棘は、先端が強くえぐれており、後ろ向きに尖っている。
ハンマー: ハンマー自体は失われていますが、その基部は縦径の5分の1未満の高さで、垂直方向に平らになっている。

これらの特徴の中でも、特に頭骨の装甲タイルは、他の既知のアンキロサウルス類とズールを区別する、独特の派生形質とされています。

さらに、ズールは、前頭骨と眼窩上部のcaputegulaeと呼ばれる構造がピラミッド型である点も特徴的です。これは、ノドケファロサウルスやタラルルスの円錐形のものとは対照的です。また、鱗状骨の角は、スコロサウルスと同様に頭骨後端から突出していますが、アノドントサウルス、エウオプロケファルス、ジアペルタとは異なります。眼窩の後ろにある隆起は小さく、まばらに分布しており、これもスコロサウルスに似ていますが、アノドントサウルス、エウオプロケファルス、ジアペルタとは異なります。テールハンマーの柄の骨棘は、モンゴルのネメグト累層で見られるピナコサウルスやサイカニアのようなアジア系統のアンキロサウルス類よりも比較的大きいことが指摘されています。

ズールの発見は、アンキロサウルス類の進化と多様性を理解する上で重要な貢献をしています。特に、保存状態の良い頭骨と尾の化石は、これらの恐竜の装甲構造や生態に関する貴重な情報を提供してくれます。

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