セキヤノアキチョウジ

セキヤノアキチョウジ（関屋の秋丁字）

セキヤノアキチョウジ（学名：Isodon effusus）は、シソ科ヤマハッカ属に分類される多年草です。日本固有種であり、その繊細な姿と特徴的な名前で知られています。

特徴

セキヤノアキチョウジの茎は四角形で、直立して30cmから100cmほどの高さに成長します。茎にはごく細かい毛が生えています。葉は対生し、長さ5cmから15cm、幅2cmから5cmの長楕円形または長楕円状狭卵形をしています。葉の先は鋭く尖り、縁には低い鋸歯があります。基部はくさび形になって短い葉柄につながり、裏面には細かい毛が生えています。

花期は9月から10月にかけてで、茎の先端や上部の葉腋から集散花序を出し、多数の青紫色の花を咲かせます。花柄は細長く、長さは1cmから2.5cmほどで、毛はありません。萼はやや唇形をしており、上唇は3つ、下唇は2つに裂けています。花冠は長さ16mmから18mmほどの2唇形で、筒部は長く、上唇は反り返って浅く4つに裂け、下唇はボートのような形をして前方に突き出ます。雄しべは4本あり、うち2本が長くなっています。雌しべは1本です。果実は4つの平滑な分果からなり、長く伸びた萼に包まれます。染色体数は2n=24です。

分布と生育環境

セキヤノアキチョウジは日本固有種であり、本州の関東地方と中部地方（愛知県以東）の山地の木陰に生育しています。

名前の由来

和名「セキヤノアキチョウジ（関屋の秋丁字）」は、「箱根産の秋丁字」という意味合いを持ちます。「関屋」とは関所のことで、ここでは箱根関を指しています。1875年にマキシモヴィッチがPlectranthus longitubus var. effusus（現在はシノニム）を記載した際、1862年に箱根で採集された標本をタイプ標本としたことに由来します。また、同属のアキチョウジに似ていることから、「秋丁字」という名前が付けられました。「秋丁字」は、秋に丁字形の花が咲くことに由来します。「せきやのあきちゃうじ」という呼称は、牧野富太郎（1898年）によって命名されました。

種小名effususは、「非常に開いた」「ばらばらの」「非常に広がった」という意味を持ちます。

分類

セキヤノアキチョウジは、同属のアキチョウジ（Isodon longitubus）とよく似ています。しかし、セキヤノアキチョウジは、花序の苞が小さく、花柄が細長く開出して長さ1cmから2.5cmになり花序の幅が広く、花柄に毛がなく、萼の上唇の裂片が披針形で鋭突頭になる点で異なります。一方、アキチョウジは、花序の苞が葉形になり、花柄は長さ1cm以下で花序の幅が狭く、花柄に細毛が生え、萼の上唇の裂片が短く鋭頭になります。

また、セキヤノアキチョウジは、葉腋から出る花序が多数あり、主茎の花序の大きさとほぼ同じであるのに対し、アキチョウジは、葉腋から出る花序が少数で、主茎の花序よりも小さいという違いがあります。

分布域にも違いがあり、セキヤノアキチョウジは愛知県以東の中部地方と関東地方に分布するのに対し、アキチョウジは本州の岐阜県以西、四国、九州に分布しています。

下位分類

シロバナセキヤノアキチョウジ（Isodon effusus f. leucanthus） - 静岡市竜爪山で採集された標本がタイプ標本です。品種名leucanthus*は「白い花の」という意味です。

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